《QC手法》

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【きゅーしーしゅほう (QC tools) 】

 QC手法がどのようなものかについての明確な定義はなく, 品質管理に活用されるさまざまな手法をQC手法と総称している. 品質管理においては, 経験や勘だけに頼るのではなく, 科学的分析に基づいて問題解決を図る「事実に基づく管理」が強調されている. 中でも, 主に数値データを解析するために用いられる統計的方法が重要である. 近代的な品質管理が, 別名SQC(Statistical Quality Control)と呼ばれるのは, 統計的方法の活用を重視してきたからである.

 品質不良の一般的原因はばらつきである. 不良品が多く発生している場合も, 不良品だけが製造されている製造工程は希である. 大概, 良品と不良品が混ざって出てくる. 良品と不良品での製造条件がばらついているから, 良品と不良品という違ったものが出てくるのである. したがって, 品質管理の基礎はこのばらつきを把握することにある. ばらつきを把握するための最良の道具は統計的方法であり, これが品質管理で統計的方法が重視される理由である.

 品質管理における問題解決において, 最も基礎的で多用される手法がQC七つ道具である. これには以下の手法が含まれる.

  • 管理図グラフ:主にデータの時間的推移を把握する. さまざまなデータを視覚化する.
  • 散布図: 2変量間の関係を把握する.
  • 層別: データの共通点や特徴に着目していくつかのグループに分ける.

いずれの手法も何らかの形でデータを図示するものであり, 視覚化によってデータからの情報の抽出を容易にしてくれる.

 この中で, 層別の考え方は特に重要である. 先にも述べたように, 不良の原因はばらつきである. したがって, いろいろな視点から層別することにより違いを発見することが, 問題解決の本質である. 不良個数を機械AとBに層別して差が出れば, 「不良が多い」という問題が「機械によって不良率に差がある」という問題にブレークダウンされ, より問題が明確になる.

 QC七つ道具は, 統計的方法の最も基礎的なものである. これ以外にも種々の統計的方法が品質管理において用いられる. 検定・推定, 分散分析, 実験計画法, 回帰分析, 多変量解析法, 計数値の解析法, 信頼性データ解析法などがある.

 これらの解析手法を適用するためには, 適切にデータがとられる必要がある. 母集団から試料をサンプリングし, 正しいデータを得るために研究されてきたのが統計理論に基づくサンプリング理論である. 試料の採取法, データの扱い方, 分散成分の推定法などについて理論が確立されており, 多くのものはJIS規格に定められている.

 同じく統計理論に基づくQC手法の1つに抜取検査がある. 米国から品質管理が導入された直後は, 品質管理の中心は検査であり, 1950年代から1960年代にかけて盛んに研究された. その理論体系はほぼ確立されており, さまざまな抜取検査法がJIS規格に制定されている. 品質管理が検査から源流管理に発展するにつれ, 検査に関する研究は主流ではなくなっている.

 これまでに述べた手法は, 主に統計理論に基づき数値データを扱うものである. 品質管理においては, 顧客の要求, クレーム, 対策についてのアイデアなど, 言語データを分析する場合も多い. 主として言語データを取り扱う一連の基礎的な手法の総称が新QC七つ道具である [1]. これには以下の手法が含まれる.

  • 親和図法: 似た言語データをグルーピングする.
  • 連関図法: 原因-結果, 目的-手段などの関係を整理する.
  • 系統図法: ゴールに対する手段, 方策などを系統的に展開する.
  • PDPC法: 事前に考えられる結果を予測し, 方策を列挙する.

この中でマトリックスデータ解析法だけは数値データに対する解析法であり, 異質である.

 この他に, 戦略立案の段階, 製品企画の段階で役立つ手法をまとめたものとして, 戦略立案七つ道具と商品企画七つ道具が最近提案されている [2] [3]. 戦略立案七つ道具は, 環境分析, 製品分析, 市場分析, 製品・市場分析, プロダクト・ポートフォリオ分析, 戦略要因分析, 資源配分分析からなる. また, 商品企画七つ道具は, グループインタビュー, アンケート調査, ポジショニング分析, 発想チェックリスト, 表現式発想法, コンジョイント分析, 品質表である. これらは, 新たに開発されたものではなく, 既存の手法を戦略立案や製品企画の段階で役立つものとして整理したものである.

 品質管理においては, 「改善」を重視する. そこで用いられる問題解決法もQC手法の1つと見るべきであろう. 品質管理においては, QCストーリーと呼ばれる問題解決のステップがよく用いられる. これはテーマの選定から今後の課題をまとめるまでの8ステップで構成されている. QCストーリーは, 不良発生などのように既に起きてしまった問題に対して特に有効である. しかし, 新商品を開発するなどの, 今存在しないものを作り上げるような問題にはややそぐわない面がある. そこで近年では, これに対し課題達成型QCストーリーという設計型の問題解決・課題達成手法が提案されている [4]. 課題達成型QCストーリーの登場にともない, これまでのQCストーリーを問題解決型QCストーリーと呼ぶことがある.

 以上がQC手法の主だったものであるが, 特にQC手法がこれであるという境界は明確ではない. 他の分野で発展してきたFMEA, FTA, OR, IE, VE/VAなどの手法も品質管理でよく用いられている.



参考文献

[1] 新QC七つ道具研究会編, 『やさしい新QC七つ道具』, 日科技連出版社, 1984.

[2] 長田洋編著, 『TQM時代の戦略的方針管理』, 日科技連出版社, 1996.

[3] 神田範明編著, 『商品企画七つ道具-新商品開発のためのツール集-』, 日科技連出版社, 1995.

[4] 狩野紀昭編著, 『現状打破・創造への道』, 日科技連出版社, 1997.