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− | で定義される関数 <math>f^*\, </math> を <math>f\, </math> の共役関数 (conjugate function) という.共役関数 <math>f^*\, </math> に対して,さらにその共役関数 <math>f^{**}=(f^*)^{*}\,</math> を考えることができるが,<math>f\, </math> が下半連続な真凸関数のときには,<math>f^{**}\, </math> は <math>f\, </math> に一致する.<math>f\, </math> に <math>f^*\, </math> を対応させる写像をルジャンドル-フェンシェル変換 (Legendre-Fenchel transform) と呼ぶ. | + | で定義される関数 <math>f^*\, </math> を <math>f\, </math> の[[共役関数]] (conjugate function) という.共役関数 <math>f^*\, </math> に対して,さらにその共役関数 <math>f^{**}=(f^*)^{*}\,</math> を考えることができるが,<math>f\, </math> が下半連続な真凸関数のときには,<math>f^{**}\, </math> は <math>f\, </math> に一致する.<math>f\, </math> に <math>f^*\, </math> を対応させる写像をルジャンドル-フェンシェル変換 (Legendre-Fenchel transform) と呼ぶ. |
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− | 下半連続な真凸関数 <math>f: \mathbf{R}^n\times{\mathbf{R}^m}\to\bar{\mathbf{R}}\,</math>に対して,関数 <math>\varphi : \mathbf{R}^n \to \bar{\mathbf{R}}\,</math> と <math>\psi : \mathbf{R}^m \to \bar{\mathbf{R}}\,</math> をそれぞれ <math>\varphi{(x)}:=f(x,0)\,</math> と <math>\psi{(y)}:=-f^{*}(0,y)\,</math> で定義し,次の問題(P)と(D)を主問題 (primal problem) とその双対問題 (dual problem) と呼ぶ [1, 4]. | + | 下半連続な真凸関数 <math>f: \mathbf{R}^n\times{\mathbf{R}^m}\to\bar{\mathbf{R}}\,</math>に対して,次の問題(P)と(D)を主問題 (primal problem) とその双対問題 (dual problem) と呼ぶ [4]. |
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| <td><math> | | <td><math> |
| \begin{array}{lll} | | \begin{array}{lll} |
− | \mbox{(P)} & \min_{x\in \mathbf{R}^n}& \varphi{(x)} \\ | + | \mbox{(P)} & \min_{x\in \mathbf{R}^n}& \varphi{(x)}:=f(x,0) \\ |
− | \mbox{(D)} & \max_{y\in \mathbf{R}^m}& \psi{(y)} | + | \mbox{(D)} & \max_{y\in \mathbf{R}^m}& \psi{(y)}:=-f^{*}(0,y) |
| \end{array} | | \end{array} |
| </math> | | </math> |
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− | が成立すれば,<math>\bar{x}</math> と <math>(\bar{\lambda},\bar{\mu})</math> はそれぞれ問題<math>(\mbox{P}_{L})\,</math>と<math>(\mbox{D}_{L})\,</math>の最適解となり最適値が一致する.これを[[ラグランジュの双対性]] (Lagrangian duality) と呼ぶ.(iv) により,<math>\mbox{min}_{x}\mbox{sup}_{y}L(x,y)=\mbox{max}_{y}\mbox{inf}_{x}L(x,y)\,</math> が成立すれば,この双対性が保証される.この等式に対する十分条件を述べた定理を[[ミニマックス定理 (数理計画における)|ミニマックス定理]](minimax theorem) と呼ぶ [1]. 逆に,主問題の目的関数 <math>f_0\, </math> と制約関数 <math>g_i\, </math> がすべて凸で,<math>h_j\, </math> がすべてアフィン関数であるような[[凸計画問題]] (convex programming problem) においては,適当な条件のもとで,問題<math>(\mbox{P}_{L})\,</math>の最適解 <math>\bar{x}</math> に対して,<math>\bar{\lambda}\ge{0}</math> であるようなラグランジュ乗数 <math>(\bar{\lambda},\bar{\mu})</math> が存在して,<math>(\bar{x},\bar{\lambda},\bar{\mu})</math> がラグランジュ関数 <math>L\, </math> の鞍点となる.さらに,次のような[[拡張ラグランジュ関数]](augmented Lagrangian function) に基づく双対性も考えられている [2, 3, 4]. | + | が成立すれば,<math>\bar{x}</math> と <math>(\bar{\lambda},\bar{\mu})</math> はそれぞれ問題<math>(\mbox{P}_{L})\,</math>と<math>(\mbox{D}_{L})\,</math>の最適解となり最適値が一致する.これを[[ラグランジュの双対性]] (Lagrangian duality) と呼ぶ.(iv) により,<math>\mbox{min}_{x}\mbox{sup}_{y}L(x,y)=\mbox{max}_{y}\mbox{inf}_{x}L(x,y)\,</math> が成立すれば,この双対性が保証される.この等式に対する十分条件を述べた定理を[[ミニマックス定理 (数理計画における)|ミニマックス定理]](minimax theorem) と呼ぶ [1, 2]. 逆に,主問題の目的関数 <math>f_0\, </math> と制約関数 <math>g_i\, </math> がすべて凸で,<math>h_j\, </math> がすべてアフィン関数であるような[[凸計画問題]] (convex programming problem) においては,適当な条件のもとで,問題<math>(\mbox{P}_{L})\,</math>の最適解 <math>\bar{x}</math> に対して,<math>\bar{\lambda}\ge{0}</math> であるようなラグランジュ乗数 <math>(\bar{\lambda},\bar{\mu})</math> が存在して,<math>(\bar{x},\bar{\lambda},\bar{\mu})</math> がラグランジュ関数 <math>L\, </math> の鞍点となる.また,次のような[[拡張ラグランジュ関数]](augmented Lagrangian function) に基づく双対性も考えられている [2, 3, 4]. |
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− | ただし,<math>r\, </math> は正定数,<math>\sigma:\mathbf{R}^{m}\rightarrow\bar{\mathbf{R}}\,</math> は <math>u\neq{0}\,</math> に対して <math>0=\sigma{(0)}<\sigma{(u)}\,</math> を満足する下半連続な真凸関数である.関数 <math>\sigma\,</math> の例としては <math>\sigma{(u)}:=\frac{1}{2}\|u\|^{2}\,</math> などがある. | + | ただし,<math>r\, </math> は正定数,<math>\sigma:\mathbf{R}^{m}\rightarrow\bar{\mathbf{R}}\,</math> は <math>u\neq{0}\,</math> に対して <math>0=\sigma{(0)}<\sigma{(u)}\,</math> を満足する下半連続な真凸関数である.関数 <math>\sigma\,</math> の例としては <math>\sigma{(u)}:=\frac{1}{2}\|u\|^{2}\,</math> などがある.さらに、最近では大域的最適化(global optimization)や抽象的凸解析(abstract convex analysis)の立場からの研究も行われている[5]. |
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| '''参考文献''' | | '''参考文献''' |
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− | [1] I. Ekeland and R. Temam, ''Convex Analysis and Variational Problems'', North-Holland, Amsterdam, 1976. | + | [1] J.M.Borwein and A.S.Lewis, ''Convex Analysis and Nonlinear Optimization, Theory and Examples(Second Edition)'', Springer, NewYork, 2006. |
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| [2] 福島雅夫,『非線形最適化の基礎』, 朝倉書店, 2001. | | [2] 福島雅夫,『非線形最適化の基礎』, 朝倉書店, 2001. |
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| [4] R.T. Rockafellar and R. J-B. Wets, ''Variational Analysis'', Springer, Berlin, 1998. | | [4] R.T. Rockafellar and R. J-B. Wets, ''Variational Analysis'', Springer, Berlin, 1998. |
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| + | [5] A.M.Rubinov, ''Abstract Convexity and Global Optimization'', Kluwer Academic, Dordrecht, 2000. |
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| + | [[Category:非線形計画|そうついせいりろん]] |
【そうついせいりろん (duality theory)】
双対性理論 (duality theory)は,非線形計画のみならず線形計画,多目的計画,離散凸解析などの分野で主問題とその双対問題の関係,および集合や関数の双対関係を説明する重要な基礎理論である [1, 2, 3, 4].
「双対」 (dual) と「共役」 (conjugate) は元々同義語として用いられ,数学の関数解析の分野では,ノルム空間 上の有界線形汎関数の全体を の双対空間 (dual space) または共役空間 (conjugate space) といい, と表して, における の値を または と書く. が 次元実ユークリッド空間 の場合は, と は同一視でき, となり, は と の内積 となる.以下に述べる事柄は,無限次元空間に対しても拡張できるが,ここでは簡単のため に限定して説明する.
空間 上で定義された拡張実数値関数 に対して(ただし,),
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で定義される関数 を の共役関数 (conjugate function) という.共役関数 に対して,さらにその共役関数 を考えることができるが, が下半連続な真凸関数のときには, は に一致する. に を対応させる写像をルジャンドル-フェンシェル変換 (Legendre-Fenchel transform) と呼ぶ.
下半連続な真凸関数 に対して,次の問題(P)と(D)を主問題 (primal problem) とその双対問題 (dual problem) と呼ぶ [4].
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また,
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とおくと, と は凸集合となる.このとき,以下が成立する.
または
ここで, は の内部を表す.(i)を弱双対定理 (weak duality theorem),(ii)を双対定理 (duality theorem) と呼び, が満たされるとき,主問題(P)と双対問題(D)の間に双対性 (duality) が成立するという.(i)により, なら主問題(P)は実行可能解を持たないが, となる と が存在すれば,それぞれ(P)と(D)の最適解となり,強い意味の双対性が成立する.一方, となるとき,主問題と双対問題の間に双対性のギャップ (duality gap) が存在するという.
主問題(P)において,(ただし, と は下半連続な真凸関数で, , )とすると,となり [4],主問題(P)と双対問題(D)はそれぞれ
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となる.ここで または が成立すれば,(ii)により主問題 (1) と双対問題 (2) の間に双対性が成立する.(ただし,dom は拡張実数値関数の実効定義域を表す.)これをフェンシェルの双対性 (Fenchel duality) と呼んでいる.通常は,簡略化して と を零ベクトル, を恒等写像として,新たに を凸関数 と凹関数 の差で表し,主問題 に対して, をフェンシェルの双対問題 (Fenchel dual problem) と呼ぶ.ただし,.双対性は のとき成立する.また, とすると,(1) と(2) は線形計画の主問題と双対問題となる [2, 4].
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次に,ラグランジュ関数 (Lagrangian function) を
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と定義する.が成立しているので,
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となる.通常,すなわち,すべての と に対してが成り立つとき, を関数 の 上での鞍点 (saddle point) と呼ぶ.(4) により,
がの鞍点
が成立する.(iv) を鞍点定理 (saddle point theorem) と呼ぶ.非線形計画問題
(ただし, は で定義された実数値関数,) に対して,
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とおくと,(3) によりに対する問題(NLP)のラグランジュ関数は
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となる.この をラグランジュ乗数 (Lagrange multipliers) と呼ぶ.このとき,主問題と双対問題は
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となり,一般に問題をラグランジュの双対問題 (Lagrangian dual problem)と呼ぶ.鞍点定理により, の鞍点 が存在すれば,つまり
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が成立すれば, と はそれぞれ問題との最適解となり最適値が一致する.これをラグランジュの双対性 (Lagrangian duality) と呼ぶ.(iv) により, が成立すれば,この双対性が保証される.この等式に対する十分条件を述べた定理をミニマックス定理(minimax theorem) と呼ぶ [1, 2]. 逆に,主問題の目的関数 と制約関数 がすべて凸で, がすべてアフィン関数であるような凸計画問題 (convex programming problem) においては,適当な条件のもとで,問題の最適解 に対して, であるようなラグランジュ乗数 が存在して, がラグランジュ関数 の鞍点となる.また,次のような拡張ラグランジュ関数(augmented Lagrangian function) に基づく双対性も考えられている [2, 3, 4].
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ただし, は正定数, は に対して を満足する下半連続な真凸関数である.関数 の例としては などがある.さらに、最近では大域的最適化(global optimization)や抽象的凸解析(abstract convex analysis)の立場からの研究も行われている[5].
参考文献
[1] J.M.Borwein and A.S.Lewis, Convex Analysis and Nonlinear Optimization, Theory and Examples(Second Edition), Springer, NewYork, 2006.
[2] 福島雅夫,『非線形最適化の基礎』, 朝倉書店, 2001.
[3] 今野浩, 山下浩,『非線形計画法』, 日科技連, 1978.
[4] R.T. Rockafellar and R. J-B. Wets, Variational Analysis, Springer, Berlin, 1998.
[5] A.M.Rubinov, Abstract Convexity and Global Optimization, Kluwer Academic, Dordrecht, 2000.