「相型分布」の版間の差分

提供: ORWiki
ナビゲーションに移動 検索に移動
2行目: 2行目:
  
 
連続時間有限状態吸収[[マルコフ連鎖]]が吸収されるまでの時間が従う分布.
 
連続時間有限状態吸収[[マルコフ連鎖]]が吸収されるまでの時間が従う分布.
マルコフ連鎖の[[推移率]]行列と初期状態分布で特徴づけられる.
+
 
[[指数分布]],[[アーラン分布]],[[超指数分布]]などを特別な場合として含む.
+
 状態 0 が吸収状態,状態 <math>i \in M =\{1,2,\ldots,M\}\,</math> が一時的状態である連続時間有限状態吸収マルコフ連鎖 <math>X(t)\,</math> を考える.このとき <math>X(t)\,</math> の推移率行列は
 +
<center>
 +
<math>
 +
 
 +
\left(\begin{array}{cc}
 +
0 & 0 \\
 +
-\mathbf{T} \mathbf{e} & \mathbf{T}
 +
\end{array}
 +
\right)
 +
</math>
 +
</center>
 +
の形に書ける.ただし <math>\mathbf{e}</math> はすべての要素が 1 の列ベクトルである.このマルコフ連鎖の初期状態分布を <math>(0, \mathbf{\alpha})</math> としたとき,<math>X(t)\,</math> が吸収されるまでの時間は <math>(0,\infty)</math> 上の確率分布を定め,これを表現<math>(\mathbf{\alpha}, \mathbf{T})</math> をもつ相型分布(phase-type distribution)という.以下ではマルコフ連鎖 <math>X(t)\,</math> の一時的状態を相と呼ぶ.
 +
 
 +
 定義より,表現 <math>(\mathbf{\alpha}, \mathbf{T})\,</math> をもつ相型分布の分布関数は <math>F(x) = 1 - \mathbf{\alpha} \exp(\mathbf{T} x) \mathbf{e}</math> となり,その平均は<math>\mathbf{\alpha} (-\mathbf{T})^{-1}\mathbf{e}</math> である.相の数 <math>M</math> を十分に大きく取ることにより,相型分布は <math>(0,\infty)</math> で定義されたあらゆる確率分布を任意の精度で近似できることが知られており,[[指数分布]],[[アーラン分布]],[[超指数分布]]など,待ち行列で頻繁に用いられる確率分布を特別な場合として含む.

2008年8月5日 (火) 19:17時点における版

【 そうがたぶんぷ (phase-type distribution) 】

連続時間有限状態吸収マルコフ連鎖が吸収されるまでの時間が従う分布.

 状態 0 が吸収状態,状態 が一時的状態である連続時間有限状態吸収マルコフ連鎖 を考える.このとき の推移率行列は

の形に書ける.ただし はすべての要素が 1 の列ベクトルである.このマルコフ連鎖の初期状態分布を としたとき, が吸収されるまでの時間は 上の確率分布を定め,これを表現 をもつ相型分布(phase-type distribution)という.以下ではマルコフ連鎖 の一時的状態を相と呼ぶ.

 定義より,表現 をもつ相型分布の分布関数は となり,その平均は である.相の数 を十分に大きく取ることにより,相型分布は で定義されたあらゆる確率分布を任意の精度で近似できることが知られており,指数分布アーラン分布超指数分布など,待ち行列で頻繁に用いられる確率分布を特別な場合として含む.