《探索モデルと探索の運動学》

提供: ORWiki
2007年7月12日 (木) 00:22時点における122.17.2.240 (トーク)による版
ナビゲーションに移動 検索に移動

【たんさくもでるとたんさくのうんどうがく (search model and kinematics of search) 】

 探知探索は3つの類型に大別できる. 探索の事前に目標位置情報 (デイタム情報) があり, デイタム点を基準に行われる探索をデイタム探索 (datum search) という. しかし移動目標物は速やかに拡散し目標分布は急速に一様化するので, 時間が経てば目標存在領域を一様に探索せざるを得なくなる. この段階を区域探索 (area search) という. また明確な目標情報はないが目標存在領域が推定され, 目標存在分布は領域内で一様と見なされる場合にも同様の状況となる. もう1つの探索は目標出現時間や位置は不明だが, 地理上の制約等からある幅の目標移動径路帯が推定できる場合である. このとき探索者は目標径路を抑える線上で通過する目標物の待ち受け探索ができる. これをバリヤー哨戒 (barrier patrol) と呼ぶ.

[デイタム探索] デイタム探索はデイタム点の誤差が大きい場合や,移動目標物の場合が問題になる. 後者では拡散する目標分布を追跡する探索となる. 既知のデイタム点から全周に速度 \( u\) で拡散する目標物を探索者が速度 \( v(v>u)\) で追跡する径路は極座標では, \( r=r_0 \exp(±\lambda \theta) \), ただし \( r_0=u t_0, t_0:\)探索開始時間, \( \lambda= \xi/\sqrt{1-\xi^2},~ \xi=u/v \),(指数の+符号は反時計方向の探索径路)で表わされる. デイタム点を一周する所要時間\( T=t_0 [\exp(2\pi \lambda)-1] \) は速度比 \( \xi \)が1に近づけば急激に増加する. また初期存在領域が円(半径 \(a\))で一様に逃避する目標物を, \([t_0,t] \) の間, 有効探索率 \( Q\) の探索者が目標存在領域の拡大に合わせて探索領域を拡大しつつランダムに探索するとき, 目標探知確率 \( P(t)\) は次式となる.



[区域探索] 目標分布が目標存在領域内で一様な場合, 探索者は領域内をしらみつぶしに一様に探索せざるを得ない. ここで一様な探索は規則的パターンで探索する方法と, 各地点を確率的に一様に探索し期待カバレッジの一様性を図る方法とがある. 前者の最も簡単な探索法は, 等間隔 \( S\) (掃引幅)の平行径路で一様に目標存在領域を走査する平行探索 (parallel sweep, raster scan) であり, 後者は各時点の探索地点を目標存在領域内で一様な確率でランダムに選んで探索するランダム探索 (random search) である. 目標物と探索者の相互探索状況では, 平行探索は目標側の先制探知により回避されやすいが, ランダム探索は探索径路を目標側に察知させない利点がある. また一方的探索ではランダム探索は探索径路が乱れ,ランダムな重複や空隙を生ずる場合の極限的な状況に対応する.

 平行探索径路の1つを \( y\) 軸, 直交して\( x\) 軸をとる. \( F(z)\) を横距離 \( z\) の直線径路の探知ポテンシャルとし, 探索区域端辺部の条件の不均質を無視して無限領域を考えれば, 掃引幅 \( S\) の平行探索の目標探知確率 \( P(S)\) は次式となる.



発見法則が決まれば \( F(\cdot)\) が定まるので \( P(S)\) が計算される. 定距離発見法則や逆3乗法則の場合の \( P(S)\) が求められている [1]. 上式は静止目標物の探知確率であるが, 目標物が動き回る場合, 平行探索径路はランダム化される.

 ランダム探索において, 目標領域面積 \( A\), 探索者の有効探索率 \( Q\), 探索時間\(t\), 探索速度 \(v\), 目標速度 \( u\) の場合の目標探知確率 \( P(t)\) は次式となる.


発見法則の形状係数,


 \( f(\xi,n)\) は[[逆{$n$}乗発見法則]]を仮定したときの有効探索率の動的増分係数 (factor of dynamic enhancement) であり, \( f(0,n)=1,f(\xi,n)\) は\( \xi\)及び \( n \)の単調増加関数である. \( f(\cdot)\) は目標物が動き回るために探索者との遭遇が増加する率を表す.

 速度 \( v\)の探索者を中心に半径\( R \)の円を考えたとき, ランダム運動の目標物(速度 \(u \)) が相対方位 \([ \alpha, \alpha+ \Delta \alpha] \)で円内に入る確率 \( g(\alpha)\Delta \alpha\)は次式となる [1] .


の場合,
の場合,


スタイル検討


探索者の針路方向 \([-\alpha, \alpha]\) の遭遇確率は \( G(\alpha)= \int_{-\alpha}^{\alpha} g(x) {\mbox{d}}x \) であり, 静止目標物(\( \xi=0 \))の場合は \( 50 \

 探索者(速度 \( v\))に劣速の目標物(速度 \( u\))が会合できるのは, 探索者の針路から \( \pm \sin^{-1}(u/v), v>u \), (近接限度角)の楔形領域に目標物がいる場合である. また時間制限 \( T\) 内の目標物の近接可能領域(region of approach) は, 探索針路を挾んで中心角 \( 2 \theta\), 弦 \( v T \), 弧の曲率半径 \( uT\) の扇形領域となる. 目標物が優速ならば時間制限がなければ常に探索者に会合できるが, 時間制限があれば探索者の前方 \( vT \) の点を中心とする半径 \( uT \) の円内が近接可能領域となる.

[バリヤー哨戒] 目標径路がある幅で予測できるとき, 探索者は目標径路を抑える線上で待ち受け探索ができる. このときの探索法は, 目標径路帯を横断して往復しつつ通過する目標物を探索する往復哨戒 (back-and-forth barrier patrol), 目標速度 \( u\) と会合針路で往復する8の字哨戒 (crossover or bow-tie type barrier patrol), 目標径路帯の中央で待ち受ける定点哨戒(fixed point barrier patrol), 目標径路帯上 の一定区域でランダム探索を行うランダム哨戒 (random patrol) 等がある. これらの評価モデルが定式化されており, 更に双方的な探索で目標側が探索者を先制探知したときは哨戒線の弱点とタイミングを選んで突破する場合の研究もある. 以上は1つの目標径路帯の哨戒パターンの評価問題であるが, 複数の目標径路への探索者の最適配置問題, ネットワーク状の目標径路網上の最適配置問題 [2], 目標側の最適径路選択のゲーム・モデルも研究されている.

[探索のマルコフ連鎖モデル] 上では3つの探索形態の定式化モデルを述べ たが, 探索中に目標状態, センサー能力, 環境条件等が再帰的に変化する場合の探索プロセスは, マルコフ連鎖モデルに定式化される. 出現/消滅形目標物の探索, 先制探知のある探索, 虚探知を含む探索等のモデルが報告されている.



参考文献

[1] B. O. Koopman, Search and Screening, OEG Report No.56, 1946.

[2] 宝崎隆祐, 飯田耕司, 寺本昌義, 「ネットワーク上の待ち伏せ捜索における離散捜索努力量の最適配分」, 『防衛大学校理工学研究報告』, 36 (1998), 39-46.