《人工知能》

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【じんこうちのう (artificial intelligence) 】

 人工知能 (artificial intelligence)とは, 人間(あるいは広く生物)の知的活動の機能を人工的に実現するための, 主としてコンピュータを中心とする人工物を指す. そして, 人工知能を実現するための研究が人工知能研究である. 人工知能実現のためには, 知的活動の本質的原理を明確にするための分析的科学的アプローチと, 知的活動の機能をモデル化し, それを実現することによって, 知的活動の本質に迫る構成的工学的アプローチの両面からの研究が必要である.

 人工知能研究は, 大きく分けると以下の3つの分野から研究が進められている. 人工知能の実現にはこれら3つの分野から総合的に研究を進めることが必要であるとの認識がなされている.

  • 生理学分野: 生理学的に直接脳の機能を明らかにする立場であり, 脳科学はその典型である.
  • 認知心理学分野: 人間の行動を通して間接的に知能を研究する立場であり, 認知心理学が代表的である.
  • 情報工学分野: 知能処理のモデルを立て, 知能の機能を実現することを目指す立場であり, 情報工学を中心とする工学的アプローチはこれに属する.

 人工知能における研究は多岐にわたるが, 情報工学分野における基本的研究課題として, 以下の5つがあげられる.

(1) 知識 知識の獲得と表現とその利用 
(2) 推論 推論表現と推論方式 
(3) 学習 学習理論と学習機能 
(4) アルゴリズム 有効な解探索戦略 
(5) プログラム 人工知能プログラミング言語の開発

 人工知能の研究を計算パラダイムから見ると, 論理計算パラダイムとシミュレーション計算パラダイムに分けられる. 論理計算パラダイムは, 知能や知識や推論を論理で表現し, アルゴリズムを駆使して人工知能の機能を実現するパラダイムである. 一方, シミュレーション計算パラダイムは, モデルを与え, シミュレーションを基礎に問題解決をはかる計算パラダイムである. 人工知能研究の歴史では, この2つのパラダイムが交互に盛んになっている. 人工知能研究の歩みに沿って, 主要な研究成果を概観する.

(1) 1940年~1960年

 人工知能の発展からみると, この時期にはアルゴリズム, 論理, シミュレーションの計算パラダイムが混然として誕生した. 特筆すべきことは, 黎明期と言うべきこの時期にすでに, 現在の人工知能に関するほとんどの基本的概念が議論されていたことである. ニューラルネットワーク, パーセプトロン, サイバネティックス, チューリングマシン, リスト処理言語Lisp等が提案された. J. McCarthy(マッカーシー)による人工知能と言う名前が合意されたのは, 1956年に開催されたダートマス会議でのことであった.

(2) 1960年代~1990年

 この時期は, 論理型計算パラダイムが中心となった時期である. また, 認知心理学的アプローチも盛んになるなど, 人工知能研究が盛んになった時期であった. E. A. Feigenbaum(ファイゲンバウム)が実用的問題に対する挑戦として知識工学を提唱した. 知識に関する基本的課題として, 知識表現 (knowledge representation), 知識獲得, 知識利用が明確にされた.  

  • 知識獲得 人間の知識を人工知能に持たせ, 知識の集積を行う.  
  • 知識表現 知識を人工知能内で表現する. 宣言型知識表現として, 意味ネットワーク, フレーム (frame)システム, 手続き型知識表現としてプロダクション規則 (production rule), 論理型知識表現として述語論理による表現がある.  

 意味ネットワークやプロダクションシステムによる推論型知識表現と医療診断エキスパートシステムMYCIN(マイシン)等の実用人工知能を目指すエキスパートシステムが開発された. アルゴリズムとして, 幅優先探索法, 深さ優先探索法, 発見的探索 (heuristic search) 法が普及した. 論理型知識の代表として, J. A. Robinsonによる一階述語論理における導出原理 (resolution principle) を応用した論理型プログラミング言語Prologの開発が行われた. また, 日本の第5世代コンピュータ計画(1982-1991)もPrologをベースに行われた.

(3) 1990年以降

 これまでの研究で, 人間の直感, 感性等は, 論理型計算パラダイムでは, 実現が難しいとの認識がなされた. また, エキスパートシステムは知識獲得が決定的なボトルネックとなることも判明した. 代わって, 盛んになってきたのが, シミュレーションを基本とする分散計算パラダイムである. ニューラルネットワークが復活し,逆伝播学習アルゴリズム (error back propagation learning)による学習とパターン認識への応用, 包摂アーキテクチャ (subsumption architecture)のロボット工学への応用, 遺伝的アルゴリズムによる人工生命の研究等が行われている.

 さらに, これらの計算機構を取り入れたマルチエージェント計算は, 個々のエージェントの自律的行動とエージェント間のコミュニケーションにより, システム全体の目的にとって, 最適な行動の創発を期待する計算パラダイムである.

 以上の工学的アプローチに対して, 大脳生理学や脳科学の立場から脳機能の解明を目指す脳研究が盛んになりつつある. 脳機能の解明は, 人工知能のモデルを構築するために必要なものとして, 人工知能研究からもその成果が期待されている.



参考文献

[1] 白井良明, 辻井潤一, 『人工知能』, 岩波書店, 1984.

[2] S. Russell and P. Norvig, Artificial Intelligence - A Modern Approach, Prentice-Hall, 1995. 古川康一監訳, 『エージェントアプローチ人工知能』, 共立出版, 1997.

[3] 前田隆, 青木文夫, 『新しい人工知能』, オーム社, 1999.