《データマイニング》

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【でーたまいにんぐ (data mining) 】

 データマイニング (data mining)は, データベース (data base) [5] に蓄えられた大量の生データに対して, 機械学習 (machine learning)に関連する複数の手順を用いる戦略により, データに内在する規則性 (regularity), 制約 (constraint), ルール (rule)などを効率よく求める研究である. なお, データベースからの知識発見 (KDD: knowledge discovery in databases)とも呼ばれ, 知識発見 (knowledge discovery)に関わる多数の学習アルゴリズムが, 人工知能だけでなくデータベースや統計学の側面を含めて研究されている. まず, ノイズや例外を含み疎な構造をもつことも多い生データを対象としたデー タマイニングに共通する知識発見の手順を(1)~(6)に簡単に示す [1].

 【手順】

(1)対象となるデータに対する既知の性質(背景知識)を利用してデータ収集を行い, データベースやデータウェアハウス (data warehouse)に格納する. (2)データに対する選択操作を前処理として行う. この段階はデータクリーニングと呼ばれる. (3)実装を前提とする制約のもとでデータの次元低減などによる変形操作を行う. (4)データマイニングを行うアルゴリズムを実行する. (5)導出された記述の解釈, ならびに, 記述の妥当性の検証を後処理として行う. (6)最終的な記述が評価され, 知識となる.

 手順(4)のアルゴリズムで求まる知識の表現法によって, データの統計的解析 (statistical analysis of data)とデータの論理的解析 (logical analysis of data)の二種類に大きく分類される.

 データの論理的解析の一種である決定木 (decision tree)を図1に示す. なお, 決定木を求めるアルゴリズムとしてID3 [4] などが知られており, エントロピーやMDL(minimum description length)基準が記述を選択する際に用いられる.


属性1 属性2 属性3 クラス
例1 10
例2 3
例3 6
例4 2
例5 9
例6 7
例7 5
例8 4
図1: 決定木を用いた概念学習の一例

図1: 決定木を用いた概念学習の一例


 関係データベースの問合せ言語SQLのGroupBy操作の拡張として位置付けられる結合ルール (association rule)を求めるアルゴリズムの研究も数多い. 結合ルールを求めるために, 最小サポート(support)値と最小確信度(confidence)を定めるヒューリスティックな閾値が用いられる. なお, 最小閾値により多数のルール導出を制限するだけではなく, 新規性や興味深さの弱いルールを最大閾値で抑制することもある. また, 頻度の高い購買パターンを結合ルールが表すため, データベースマーケティング(database marketing)などをターゲットに, 計算機アーキテクチャを含めた効率良い実装が進んでいる.

 その他, 多変量解析の手法を用いるクラスター分析 (cluster analysis)や, 因果関係を表現するベイズネットワーク (Baysian network)や, 論理的表現に対する帰納推論プログラミング(ILP: inductive logicprogramminge)などもアプローチの一つである. また, ルールの理解可能性を高める上で, ルールの視覚化 (visualization)も欠かせない.

 なお, ラフ集合(rough sets), ファジー理論(fuzzy theory), ニューラルネットワーク(neural network), 遺伝アルゴリズム(genetic algorithm)などの研究とも密接に関係している.

 ところで, データマイニングの対象となるデータは, 航空会社, 銀行, クレジットカード会社, 電話, 保険などでのトランザクションだけではなく, WWWデータや医療データなどの異なる性質をもつデータも含まれる [2]. 特に, 学習データの種類が限定される場合, 地理データに対しては空間データマイニング(spatial data mining), 文書データに対してはテキストマイニング(text mining)などと呼ぶ. また, データマイニングに関連したシフトウェア(siftware)と呼ばれるソフトウェアの開発も盛んである.

 なお, 良質な知識を発見するには, 複数のアルゴリズムを適用するだけではなく, データの前処理・ルールの後処理が重要となる. したがって, 実用化に向けて, 例えば, 各種情報システムを効果的に運用することを考えたデータ収集戦略を決定しなければならない.



参考文献

[1] U. M. Fayyad, G. Piatetsky-Shapiro, P. Smyth and R. Uthurusamy, Advances in Knowledge Discovery and Data Mining, AAAI/MIT Press, 1996.

[2] R. Michalski, I. Bratko and M. Kubat, Machine Learning and Data Mining, Methods and Applications, John Wiley & Sons Ltd., 1998.

[3] J. Pearl, Probabilistic Reasoning in Intelligent Systems: Networks of Plausible Inference, Morgan-Kaufmann, 1988.

[4] J. R. Quinlan, C4.5: Programs for Machine Learning, Morgan Kaufmann Publishers, Inc., 1993. 古川康一監訳, 『AIによるデータ解析』, トッパン, 1995.

[5] J. D. Ullman, Principles of Database and Knowledge-Base Systems, Vol.I, Vol.II, Computer Science Press, 1988.