双対性理論

提供: ORWiki
2007年6月29日 (金) 13:46時点におけるOrsjwiki (トーク | 投稿記録)による版
ナビゲーションに移動 検索に移動

【そうついせいりろん (duality theory)】

 双対性理論 (duality theory)は,非線形計画のみならず線形計画,多目的計画,離散凸解析などの分野で主問題とその双対問題の関係,および集合や関数の双対関係を説明する重要な基礎理論である [1, 2, 3, 4].

 「双対」 (dual) と「共役」 (conjugate) は元々同義語として用いられ,数学の関数解析の分野では,ノルム空間 上の有界線形汎関数の全体を の双対空間 (dual space) または共役空間 (conjugate space) といい, と表して, における の値を または と書く.構文解析に失敗 (MathML、ただし動作しない場合はSVGかPNGで代替(最新ブラウザーや補助ツールに推奨): サーバー「https://en.wikipedia.org/api/rest_v1/」から無効な応答 ("Math extension cannot connect to Restbase."):): {\displaystyle n\, } 次元実ユークリッド空間 の場合は, は同一視でき, となり, の内積 となる.以下に述べる事柄は,無限次元空間に対しても拡張できるが,ここでは簡単のため に限定して説明する.

 空間 上で定義された拡張実数値関数 に対して(ただし,),



で定義される関数 の共役関数 (conjugate function) という.共役関数 に対して,さらにその共役関数 を考えることができるが, が下半連続な真凸関数のときには, に一致する. を対応させる写像をルジャンドル-フェンシェル変換 (Legendre-Fenchel transform) と呼ぶ.

 下半連続な真凸関数 に対して,関数 をそれぞれ で定義し,次の問題(P)と(D)を主問題 (primal problem) とその双対問題 (dual problem) と呼ぶ [1, 4].



また,



とおくと, は凸集合となる.このとき,以下が成立する.


または


ここで, の内部を表す.(i)を弱双対定理 (weak duality theorem),(ii)を双対定理 (duality theorem) と呼び, が満たされるとき,主問題(P)と双対問題(D)の間に双対性 (duality) が成立するという.(i)により, なら主問題(P)は実行可能解を持たないが, となる が存在すれば,それぞれ(P)と(D)の最適解となり,強い意味の双対性が成立する.一方, となるとき,主問題と双対問題の間に双対性のギャップ (duality gap) が存在するという.

 主問題(P)において,(ただし, は下半連続な真凸関数で, , )とすると,となり [4],主問題(P)と双対問題(D)はそれぞれ



となる.ここで または が成立すれば,(ii)により主問題 (1) と双対問題 (2) の間に双対性が成立する.(ただし,dom は拡張実数値関数の実効定義域を表す.)これをフェンシェルの双対性 (Fenchel duality) と呼んでいる.通常は,簡略化して を零ベクトル, を恒等写像として,新たに を凸関数 と凹関数 の差で表し,主問題 に対して, をフェンシェルの双対問題 (Fenchel dual problem) と呼ぶ.ただし,.双対性は のとき成立する.また, とすると,(1) と(2) は線形計画の主問題と双対問題となる [2, 4].


構文解析に失敗 (MathML、ただし動作しない場合はSVGかPNGで代替(最新ブラウザーや補助ツールに推奨): サーバー「https://en.wikipedia.org/api/rest_v1/」から無効な応答 ("Math extension cannot connect to Restbase."):): {\displaystyle \begin{array}{clcll} (\mbox{P}_{LP}) & \mbox{min.} & c^{\top}x & s. t. & x\ge{0}, \ Ax\ge{b}. \\ (\mbox{D}_{LP}) & \mbox{max.} & b^{\top}y & s. t. & y\ge{0}, \ A^{\top}y\le{c}. \end{array} }


次に,ラグランジュ関数 (Lagrangian function) を


    


と定義する.が成立しているので,


    


となる.通常,すなわち,すべての に対してが成り立つとき, を関数 上での鞍点 (saddle point) と呼ぶ.(4) により,



の鞍点


が成立する.(iv) を鞍点定理 (saddle point theorem) と呼ぶ.非線形計画問題


(ただし, で定義された実数値関数,) に対して,



とおくと,(3) により構文解析に失敗 (MathML、ただし動作しない場合はSVGかPNGで代替(最新ブラウザーや補助ツールに推奨): サーバー「https://en.wikipedia.org/api/rest_v1/」から無効な応答 ("Math extension cannot connect to Restbase."):): {\displaystyle y=(\lambda,\mu)=(\lambda_{1},\ldots,\lambda_{k},\mu_{1},\ldots,\mu_{l}) \in{\mathbf{R}^{k}_{+}\times{\mathbf{R}^{l}}}} に対する問題(NLP)のラグランジュ関数は


    


となる.この をラグランジュ乗数 (Lagrange multipliers) と呼ぶ.このとき,主問題と双対問題は



となり,一般に問題をラグランジュの双対問題 (Lagrangian dual problem)と呼ぶ.鞍点定理により, の鞍点 が存在すれば,つまり



が成立すれば, はそれぞれ問題の最適解となり最適値が一致する.これをラグランジュの双対性 (Lagrangian duality) と呼ぶ.(iv)により, が成立すれば,この双対性が保証される.この等式に対する十分条件を述べた定理をミニマックス定理(minimax theorem) と呼ぶ [1]. 逆に,主問題の目的関数 と制約関数 がすべて凸で, がすべてアフィン関数であるような凸計画問題 (convex programming problem) においては,適当な条件のもとで,問題の最適解 に対して, であるようなラグランジュ乗数 が存在して, がラグランジュ関数 の鞍点となる.さらに,次のような拡張ラグランジュ関数(augmented Lagrangian function) に基づく双対性も考えられている [2, 3, 4].



ただし, は正定数, に対して を満足する下半連続な真凸関数である.関数 の例としては などがある.



参考文献

[1] I. Ekeland and R. Temam, Convex Analysis and Variational Problems, North-Holland, Amsterdam, 1976.

[2] 福島雅夫,『非線形最適化の基礎』, 朝倉書店, 2001.

[3] 今野浩, 山下浩,『非線形計画法』, 日科技連, 1978.

[4] R.T. Rockafellar and R. J-B. Wets, Variational Analysis, Springer, Berlin, 1998.