《大規模AHP》

提供: ORWiki
2007年7月12日 (木) 21:50時点における122.17.2.240 (トーク)による版
ナビゲーションに移動 検索に移動

【だいきぼAHP (large scale AHP) 】

 大規模AHP (Large scale AHP)[1]とは, 複数の評価者を想定したAHPのモデルである. 通常のAHPとの違いは, 多数の代替案, 複数の評価者および欠落データを許している点である. つまり, 各評価者は多数の代替案に対し一対比較するのではなく, 相対評価できる代替案のみ一対比較するものである. AHPでは一人の評価者が全一対比較するため, 評価項目(代替案)の数を$$とすると, 一対比較の回数は$$回となり, 評価項目(代替案)の数が増加すると, 一対比較の回数が爆発的に増加する. 例えば, 評価項目が1階層で, 5個の評価項目の場合, $$回の一対比較を行う. さらに, 代替案が10個ある場合各評価項目に対し$$回の一対比較を行う必要がある. 合計すると, 235回の一対比較する必要がある. これは, かなり困難な作業である. 大規模AHPは, 複数の評価者が評価を行うことと欠落データを許すことにより, 1人の評価者が行う一対比較する作業を軽減することができる.

 AHPの重要度ベクトルの導出法には, 固有ベクトル法と幾何平均法(対数最小2乗法)があるが, 対数最小二乗法の考えを大規模な問題に適用した手法が大規模AHPである. AHPでは, 一人の評価者が同一階層の評価項目(代替案)間を全一対比較する必要がある. しかし, 評価項目(代替案)の項目数$$が多くなるにつれて, 莫大な労力と時間が必要となる. そこで大規模AHPでは次のような評価方法を提案している.

「各評価者が相対評価できる評価項目(代替案)間のみに一対比較を行い, 一対比較による相対評価を行わない評価項目(代替案)間を許す. 相対評価された評価項目(代替案)間には一対比較値を割り当てる. 」

 大規模AHPでは, 一対比較ネットワークという考えを導入する. 一対比較ネットワークは, 次のように与える. 評価者は$$人とし, このとき第$$評価者が一対比較した評価項目(代替案)対の集合を,


代替案$$は第$$評価者によって一対比較された. 構文解析に失敗 (構文エラー): {\displaystyle }\\, }


とする. 第$$評価者が評価項目(代替案)$$に対して, 評価項目(代替案)$$を一対比較した場合, その一対比較値を$$とする. いずれかの評価者によって一対比較された評価項目(代替案)対の集合$$は, $$であり, また, いずれの評価者からも一対比較されなかった評価項目(代替案)対の集合$$は,


構文解析に失敗 (構文エラー): {\displaystyle \bar{K}=\{(i,j)|1 \le i<j \le n\}\backslash K \]\, }


である. $$であれば, 一対比較されなかった評価項目(代替案)の組が存在し, 逆も成り立つ. 大規模AHPでは各評価者が一対比較しない評価項目(代替案)間の存在も許すので, $$となる場合もありえる. ここで, ノードの集合を$$, エッジの集合を$$としたグラフ$$を一対比較ネットワークと定義する.

 第$$評価者と第$$評価者が重複して評価項目(代替案)$$を一対比較したならば, ネットワーク$$で点$$と点$$を結ぶエッジは2本以上存在する. 従って一対比較ネットワーク$$のエッジの数は, $$である. $$であれば, ある評価項目(代替案)の組に対して重複評価が存在し, 逆も成り立つ. 一対比較ネットワーク$$において, 任意のノードは全てのノードと直接または間接的に連結されている必要がある.

 一対比較ネットワーク$$において, エッジでノードが結ばれている関係を示す行列を, 接続行列(Connection Matrix)として$$, 接続行列の列に割り当てられたエッジのならびに沿って, 各評価者の一対比較値を対数変換した値$$を並べたベクトルを, カットベクトル(Cut Vector)として$構文解析に失敗 (構文エラー): {\displaystyle \mbox{\boldmath$p$}$\, } とする.

 大規模AHPでのウェイトベクトルの導出は, 誤差モデルを用いて, ウェイトベクトル$構文解析に失敗 (構文エラー): {\displaystyle \mbox{\boldmath$w$}\, } $をを対数変換した$構文解析に失敗 (構文エラー): {\displaystyle \tilde{\mbox{\boldmath$w$}}\, } $推定することにより求められる. すなわち,


構文解析に失敗 (構文エラー): {\displaystyle \min \| C^{\top} \tilde{\mbox{\boldmath$w$}} - \mbox{\boldmath$p$} \|^2 =\min \sum_{l=1}^{L} \sum_{i=1}^n \sum_{j=1}^n (\tilde{\mbox{\boldmath$w$}}_i-\tilde{\mbox{\boldmath$w$}}_j-\tilde{a}^l_{ij})^2\]\, }


を満足する$構文解析に失敗 (構文エラー): {\displaystyle \mbox{\boldmath$w$}\, } $を求める. いま$を$$ノルム(ユークリッドノルム)$$とすると, $構文解析に失敗 (MathML、ただし動作しない場合はSVGかPNGで代替(最新ブラウザーや補助ツールに推奨): サーバー「https://en.wikipedia.org/api/rest_v1/」から無効な応答 ("Math extension cannot connect to Restbase."):): {\displaystyle \tilde{\mbox{\boldmath$w$}}\, } $は正規方程式の解として, 以下のように与えられる.


構文解析に失敗 (構文エラー): {\displaystyle CC^{\top}\tilde{\mbox{\boldmath$w$}}=C\mbox{\boldmath$p$}\]\, }


しかし, 接続行列$$のランクは$$であり, $構文解析に失敗 (構文エラー): {\displaystyle \tilde{\mbox{\boldmath$w$}}\, } $の解は一意に決定されない. そこで一般化逆行列を用いて,


構文解析に失敗 (MathML、ただし動作しない場合はSVGかPNGで代替(最新ブラウザーや補助ツールに推奨): サーバー「https://en.wikipedia.org/api/rest_v1/」から無効な応答 ("Math extension cannot connect to Restbase."):): {\displaystyle \tilde{\mbox{\boldmath$w$}}=(CC^{\top}+\mbox{\boldmath$e$}\mbox{\boldmath$e$}^{\top})^{-1}C\mbox{\boldmath$p$}+\frac{\tilde{\alpha}}{n}\mbox{\boldmath$e$}\]\, }


で与えられる. このとき構文解析に失敗 (構文エラー): {\displaystyle $\mbox{\boldmath$e$}\, } $は全ての要素が$$のベクトル, $$は$構文解析に失敗 (構文エラー): {\displaystyle \tilde{\mbox{\boldmath$w$}}\, } $を対数逆変換した$構文解析に失敗 (MathML、ただし動作しない場合はSVGかPNGで代替(最新ブラウザーや補助ツールに推奨): サーバー「https://en.wikipedia.org/api/rest_v1/」から無効な応答 ("Math extension cannot connect to Restbase."):): {\displaystyle \mbox{\boldmath$w$}\, } $の総和が$1$となるような実数である.



参考文献

[1] 八卷直一, 関谷和之, 「複数の評価者を想定した大規模なAHPの提案と人事評価への適用」, 『日本オペレーションズリサーチ学会論文誌』, 1999, 405-420.