「《議員定数配分問題》」の版間の差分

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:<math>q_{i} = \frac{p_{i}K}{ \sum_{i \in N }p_{i}}\, </math>     <math>(1) \,</math>  
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総議員定数が<math>k\, </math>のときの選挙区<math>i\, </math>の配分議員定数を<math>d(k,i)\, </math>と表すと, 階数関数<math>r(p,d)\, </math>の値が最も大きい選挙区に次々に定数を配分するという操作を繰り返す. したがって除数法では, 除数関数<math>v(d)\, </math>の与え方によっていろいろな配分方法を作ることができる. <math>v(d)=d, d+1/2, d+1\, </math>はそれぞれ最小除数法, 過半小数法(ウェブスター法とも呼ばれる), そして最大除数法(ドント法とも呼ばれる)に対応する.  
 
総議員定数が<math>k\, </math>のときの選挙区<math>i\, </math>の配分議員定数を<math>d(k,i)\, </math>と表すと, 階数関数<math>r(p,d)\, </math>の値が最も大きい選挙区に次々に定数を配分するという操作を繰り返す. したがって除数法では, 除数関数<math>v(d)\, </math>の与え方によっていろいろな配分方法を作ることができる. <math>v(d)=d, d+1/2, d+1\, </math>はそれぞれ最小除数法, 過半小数法(ウェブスター法とも呼ばれる), そして最大除数法(ドント法とも呼ばれる)に対応する.  
  
 議員定数配分問題は数学的にも興味ある問題であるが, 現在に至るまで過去200年以上もの間実際の米国各州の下院議員定数を定める問題として多くの研究者, 法律家, 議員等によって詳細な検討が加えられ, 種々の提案がなされている. ある時期に採択されていた配分方法が, 後に何らかの"欠点"が発見され改訂が行われるということがこれまで数多く繰り返されている. たとえば[[最大剰余数法]]は[[アラバマパラドックス]]という欠陥が発見されて採用されなくなり, また[[不偏性]]あるいは[[整合性]]といった[[公平性基準]], すなわち議員定数配分方法の有すべき特性側面からの評価も重要となる. 最近ではすべての"望ましい"性質を持つような議員定数配分方法の存在を疑う声も出ている(完全に証明されているわけではない). このように議員定数配分問題は根本的な意味で数学的な難しさを内包する問題であるが, 将来とも多くの研究者の興味ある研究対象として存在し続けると思われる.  
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 議員定数配分問題は数学的にも興味ある問題であるが, 現在に至るまで過去200年以上もの間実際の米国各州の下院議員定数を定める問題として多くの研究者, 法律家, 議員等によって詳細な検討が加えられ, 種々の提案がなされている. ある時期に採択されていた配分方法が, 後に何らかの"欠点"が発見され改訂が行われるということがこれまで数多く繰り返されている. たとえば[[最大剰余数法]]は[[アラバマパラドックス]]という欠陥が発見されて採用されなくなり, また[[不偏性]]あるいは[[整合性 (議員定数配分方法の)|整合性]]といった[[公平性基準]], すなわち議員定数配分方法の有すべき特性側面からの評価も重要となる. 最近ではすべての"望ましい"性質を持つような議員定数配分方法の存在を疑う声も出ている(完全に証明されているわけではない). このように議員定数配分問題は根本的な意味で数学的な難しさを内包する問題であるが, 将来とも多くの研究者の興味ある研究対象として存在し続けると思われる.  
  
  
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[2] W. F. Lucas, "The apportionment problem," ''Modules in Applied Mathematics,'' Chapter 14, Lucas, W. F.(ed.), Vol.2, Springer-Verlag, 1983, 358-396.
 
[2] W. F. Lucas, "The apportionment problem," ''Modules in Applied Mathematics,'' Chapter 14, Lucas, W. F.(ed.), Vol.2, Springer-Verlag, 1983, 358-396.
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[[category:公共システム|ぎいんていすうはいぶんもんだい]]

2007年8月7日 (火) 16:52時点における最新版

【ぎいんていすうはいぶんもんだい (apportionment problem】

 各選挙区の人口(あるいは有権者数)とそれらのすべての選挙区に割り当てられる総議席数すなわち総議員定数が与えられているとき, 総議員定数を各選挙区にそれらの人口分布に基いて``できるだけ公平"に配分する方法を求めるのが議員定数配分問題である. 議員定数配分問題は社会的にも非常に重要な問題であるが, 欧米においてかなり古くから数学者をはじめとする多くの研究者によって詳細な検討を加えられている(Balinski-Young['82],Lucas['83]など参照). 議員定数配分問題は数学的, 数理的な厳密な意味では未だ未解決の非常に難しい問題であるが, 現在においても学問的に, そして実際に各選挙区に議員定数を配分するという政治の場においても活発な議論がなされている. 議員定数配分問題を数理的に考察するとき, 上述のような"公平性"の基準をどのように定めればよいかという問題, そしてその基準を達成する定数配分方法はどのようなものかという2つの問題が中心課題となる.

 対象とする選挙区の集合に対して, 各選挙区の人口が(人), そして総議員定数が(人)と与えられている. このとき選挙区に割り当てられる議員定数は, 理論的かつ理想的には


     


となる. を選挙区の理想議員定数と呼ぶ. 各選挙区の現実の議員定数はすべてそれ自身正整数(0もあり得る)であって, かつ総議員定数が(正整数)でなければならない. すなわちは以下の条件を満たす.


     


整数,      


 理想議員定数がすべて整数ならば, とすることによって議員定数配分問題は解決するが, 一般にはは整数とはならず, に一致させることはできない. われわれの議員定数配分問題は, 制約条件(2),(3)を満たすようなの中でそれぞれの選挙区の議員定数が"理想議員定数にできるだけ近くなるようなもの"を求めることになる. したがって決定すべき議員定数が"理想議員定数にできるだけ近く", すなわち"公平"の基準を明確にすることが必要とされる. しかしながら, 議員定数配分問題は"公平"の基準が明確にされたとしても容易に解決される問題ではない. "公平"の基準は非常に数多く存在し, しかもそれらが異なる議員定数配分を与え, いずれの方法がより望ましいかを結論づけられないのが現状である.

 議員定数配分方法は, 剰余数に基づくものと除数に基づくものとの大きく2種類に分けることができる. 前者については, 剰余数の大きい選挙区から順に理想議員定数の切り上げを行うという最大剰余数法が代表的である. 除数に基づくものは一般に除数法と呼ばれ, 議員1人が何人の人口を"代表"すべきかを設定し, それに基いて各選挙区の議員定数を決定するというのが基本的な考え方である.

 除数法の一般的な計算手順では除数関数, を与え, 人口pを除数関数で除して得られる階数関数を次のように定める.


     


総議員定数がのときの選挙区の配分議員定数をと表すと, 階数関数の値が最も大きい選挙区に次々に定数を配分するという操作を繰り返す. したがって除数法では, 除数関数の与え方によっていろいろな配分方法を作ることができる. はそれぞれ最小除数法, 過半小数法(ウェブスター法とも呼ばれる), そして最大除数法(ドント法とも呼ばれる)に対応する.

 議員定数配分問題は数学的にも興味ある問題であるが, 現在に至るまで過去200年以上もの間実際の米国各州の下院議員定数を定める問題として多くの研究者, 法律家, 議員等によって詳細な検討が加えられ, 種々の提案がなされている. ある時期に採択されていた配分方法が, 後に何らかの"欠点"が発見され改訂が行われるということがこれまで数多く繰り返されている. たとえば最大剰余数法アラバマパラドックスという欠陥が発見されて採用されなくなり, また不偏性あるいは整合性といった公平性基準, すなわち議員定数配分方法の有すべき特性側面からの評価も重要となる. 最近ではすべての"望ましい"性質を持つような議員定数配分方法の存在を疑う声も出ている(完全に証明されているわけではない). このように議員定数配分問題は根本的な意味で数学的な難しさを内包する問題であるが, 将来とも多くの研究者の興味ある研究対象として存在し続けると思われる.



参考文献

[1] M. L. Balinski and H. P. Young, Fair Representation : Meeting the Ideal of One Man, One Vote, Yale Univ. Press, 1982.

[2] W. F. Lucas, "The apportionment problem," Modules in Applied Mathematics, Chapter 14, Lucas, W. F.(ed.), Vol.2, Springer-Verlag, 1983, 358-396.