「ロジスティクス」の版間の差分

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=== 概要 ===
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経済活動において, 顧客が本当に要求するものを, 要求する量だけ, 要求するときに, 要求する場所へ供給するための諸活動をロジスティクスと呼ぶ. 効果的なロジスティクスを実現するためには, 個々の物流業務の改善だけではなく, 調達, 生産, 物流, 販売などからなるシステム全体をトータルに捉えた最適化が必要となる. もともとは軍事用語の「兵站」に対応し, 物資や兵員供給などの後方支援を意味していた.
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=== 詳説 ===
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 経済活動では, 生産者から消費者へ製品やサービスなどの商品を供給することでさまざまな価値が生み出される. これを生産者の立場からではなく, 顧客である消費者の側に立って考えると, 顧客が本当に要求する商品を, 要求する量だけ, 要求する時に, 要求する場所まで供給することが重要であり, そのための諸活動をビジネスロジスティクス, または単にロジスティクスと呼んでいる.
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 [[ロジスティクス]]とは, もともと兵站とか後方支援を意味する軍事用語であり, 戦地での物資や兵員の調達, 輸送, 管理をトータルな戦略にもとづいて行うことを意味していた. この概念が, 企業活動の中で特に[[物流]](physical distribution)の分野に転用され, 現在では生産や販売も含む概念に拡張されて用いられるようになったのである. つまり, ロジスティクスとは, 「顧客の要求に適合することを目的として, 調達・生産・物流・販売を効率的・総合的におこなうこと」ということもできる.
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ロジスティクスを進める上での本質的な要因として, そもそも生産者と消費者には, 空間的なギャップ, 時間的なギャップ, 社会的なギャップの3種類のギャップがある点が指摘できる.
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*空間的なギャップ… 商品を生産する場所と消費する場所が異なること. 通常, 生産は工場でまとめて行われ, そこで生産された個々の品物が商品として消費者のもとへ輸送, 配送される.
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*時間的なギャップ… 消費者が商品を必要とする時期はさまざまであり, これは生産者が生産することに適した時期とは必ずしも一致しない. したがって, 商品を一時的に保管するという作業が必要となる.
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*社会的なギャップ… 生産者と消費者は, 通常, 経済的に別々の主体である. したがって, 所有権に移動にともない, 受発注や代金決済などの事務処理や, 検品, 検収などの作業をあわせて行う必要がある.
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さらに商品は, より消費者に近づくにつれて個別の品揃えが要求されるのに対し, 生産者側では大量一括処理が効率の点から適しているという要因も指摘することができる.
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<center><table><tr><td align=center>[[画像:0172-c-c-01+fig-ff.png|center|図1:ロジスティクス全体の流れ]]</td></tr>
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これらの要因を克服するために, 一般的には図1に示すような卸や小売りといった流通業者が存在し, さらに物流業者も加わって物の流れと情報の流れを媒介する機能を担っている.
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 近年, ロジスティクスが注目されるようになった背景には, 顧客の要求がますます多様化し, より多頻度で多品種少量の注文に対しても最短のリードタイムで対処できることが求められるようになった点があげられる. そして, 発注方法, 納品方法についてもさまざまな要求に対応できなければならない. さらに, 公害や交通渋滞など地域の環境問題に対する配慮も重要であり, このような点をすべて満足するような製品供給のしくみを, できるだけ低コストで実現しなくてはならないのである. この問題に対処するためには, 輸送, 保管, 流通加工, 包装, 荷役, 物流情報といった物流に関する基本機能を部分的に改善するアプローチでは限界があることは明らかであり, 部品や資材メーカーから最終消費者に至るサプライチェーン全体の物の流れと情報の流れの最適化が必要となる.
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 ロジスティクス全体の最適化を実現するためには, 今まで各企業が個々にもっていた物流システムおよび情報システムを企業の垣根を越えて統合し, それぞれのケースに応じて再構成することが求められている. 例えば, 物流の統合化として, 配送先を同一とするいくつかの企業がグループを形成し, パレットの共通化, 規格化などを経て, 共同配送, 共同輸送を実現し効果をあげている例が報告されている. また, メーカーが流通機能を取り込むケースやその逆のケースなど, 垂直的な統合も進められている. さらに, サードパーティー・ロジスティクスと呼ばれる, 第三者が主体的かつ総合的にロジスティクスを進めるケースも見られる. そして, これらの物流システムの統合化とあわせて, ロジスティクスを構成する企業間の情報システムの統合も進んでおり, VAN(付加価値通信網)を用いた共同受発注システムや, 小売店とメーカーを直結したCRP(連続充填プログラム), そしてインターネットを利用したダイレクトマーケティングなど, 水平的または垂直的なシステムの統合と再構成が現在盛んに行われている.
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経済活動において, 顧客が本当に要求するものを, 要求する量だけ, 要求するときに, 要求する場所へ供給するための諸活動をロジスティクスと呼ぶ. 効果的なロジスティクスを実現するためには, 個々の物流業務の改善だけではなく, 調達, 生産, 物流, 販売などからなるシステム全体をトータルに捉えた最適化が必要となる. もともとは軍事用語の「兵站」に対応し, 物資や兵員供給などの後方支援を意味していた.
 
  
詳しくは[[《ロジスティクス》|基礎編:ロジスティクス]]を参照.
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'''参考文献'''
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[1] 阿保栄司, 『ロジスティクス革新戦略』, 日刊工業新聞社, 1993.
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[2] 圓川隆夫, 『トータル・ロジスティクス -生販物統合化のキーポイントー』, 工業調査会, 1995.
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[3] 苦瀬博仁, 『付加価値創造のロジスティクス』, 税務経理協会, 1999.
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[4] 富士通ロジスティクスソリューションチーム編, 『先端事例に学ぶロジスティクスが会社を変える』, 白桃書房, 1999.
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[[category:生産・在庫・ロジスティクス|ろじすてぃくす]]

2008年4月2日 (水) 16:07時点における最新版

【ろじすてぃくす (logistics)】

概要

経済活動において, 顧客が本当に要求するものを, 要求する量だけ, 要求するときに, 要求する場所へ供給するための諸活動をロジスティクスと呼ぶ. 効果的なロジスティクスを実現するためには, 個々の物流業務の改善だけではなく, 調達, 生産, 物流, 販売などからなるシステム全体をトータルに捉えた最適化が必要となる. もともとは軍事用語の「兵站」に対応し, 物資や兵員供給などの後方支援を意味していた.

詳説

 経済活動では, 生産者から消費者へ製品やサービスなどの商品を供給することでさまざまな価値が生み出される. これを生産者の立場からではなく, 顧客である消費者の側に立って考えると, 顧客が本当に要求する商品を, 要求する量だけ, 要求する時に, 要求する場所まで供給することが重要であり, そのための諸活動をビジネスロジスティクス, または単にロジスティクスと呼んでいる.

 ロジスティクスとは, もともと兵站とか後方支援を意味する軍事用語であり, 戦地での物資や兵員の調達, 輸送, 管理をトータルな戦略にもとづいて行うことを意味していた. この概念が, 企業活動の中で特に物流(physical distribution)の分野に転用され, 現在では生産や販売も含む概念に拡張されて用いられるようになったのである. つまり, ロジスティクスとは, 「顧客の要求に適合することを目的として, 調達・生産・物流・販売を効率的・総合的におこなうこと」ということもできる.

ロジスティクスを進める上での本質的な要因として, そもそも生産者と消費者には, 空間的なギャップ, 時間的なギャップ, 社会的なギャップの3種類のギャップがある点が指摘できる.

  • 空間的なギャップ… 商品を生産する場所と消費する場所が異なること. 通常, 生産は工場でまとめて行われ, そこで生産された個々の品物が商品として消費者のもとへ輸送, 配送される.
  • 時間的なギャップ… 消費者が商品を必要とする時期はさまざまであり, これは生産者が生産することに適した時期とは必ずしも一致しない. したがって, 商品を一時的に保管するという作業が必要となる.
  • 社会的なギャップ… 生産者と消費者は, 通常, 経済的に別々の主体である. したがって, 所有権に移動にともない, 受発注や代金決済などの事務処理や, 検品, 検収などの作業をあわせて行う必要がある.

さらに商品は, より消費者に近づくにつれて個別の品揃えが要求されるのに対し, 生産者側では大量一括処理が効率の点から適しているという要因も指摘することができる.


図1:ロジスティクス全体の流れ

図1:ロジスティクス全体の流れ


これらの要因を克服するために, 一般的には図1に示すような卸や小売りといった流通業者が存在し, さらに物流業者も加わって物の流れと情報の流れを媒介する機能を担っている.

 近年, ロジスティクスが注目されるようになった背景には, 顧客の要求がますます多様化し, より多頻度で多品種少量の注文に対しても最短のリードタイムで対処できることが求められるようになった点があげられる. そして, 発注方法, 納品方法についてもさまざまな要求に対応できなければならない. さらに, 公害や交通渋滞など地域の環境問題に対する配慮も重要であり, このような点をすべて満足するような製品供給のしくみを, できるだけ低コストで実現しなくてはならないのである. この問題に対処するためには, 輸送, 保管, 流通加工, 包装, 荷役, 物流情報といった物流に関する基本機能を部分的に改善するアプローチでは限界があることは明らかであり, 部品や資材メーカーから最終消費者に至るサプライチェーン全体の物の流れと情報の流れの最適化が必要となる.

 ロジスティクス全体の最適化を実現するためには, 今まで各企業が個々にもっていた物流システムおよび情報システムを企業の垣根を越えて統合し, それぞれのケースに応じて再構成することが求められている. 例えば, 物流の統合化として, 配送先を同一とするいくつかの企業がグループを形成し, パレットの共通化, 規格化などを経て, 共同配送, 共同輸送を実現し効果をあげている例が報告されている. また, メーカーが流通機能を取り込むケースやその逆のケースなど, 垂直的な統合も進められている. さらに, サードパーティー・ロジスティクスと呼ばれる, 第三者が主体的かつ総合的にロジスティクスを進めるケースも見られる. そして, これらの物流システムの統合化とあわせて, ロジスティクスを構成する企業間の情報システムの統合も進んでおり, VAN(付加価値通信網)を用いた共同受発注システムや, 小売店とメーカーを直結したCRP(連続充填プログラム), そしてインターネットを利用したダイレクトマーケティングなど, 水平的または垂直的なシステムの統合と再構成が現在盛んに行われている.




参考文献

[1] 阿保栄司, 『ロジスティクス革新戦略』, 日刊工業新聞社, 1993.

[2] 圓川隆夫, 『トータル・ロジスティクス -生販物統合化のキーポイントー』, 工業調査会, 1995.

[3] 苦瀬博仁, 『付加価値創造のロジスティクス』, 税務経理協会, 1999.

[4] 富士通ロジスティクスソリューションチーム編, 『先端事例に学ぶロジスティクスが会社を変える』, 白桃書房, 1999.