《金利変動モデルと債券価格》

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【きんりへんどうもでるとさいけんかかく (interest rate model and bond price)】

 金利変動モデル(interest rate model)を仮定することによって, 債券の理論価格を求めることができる. 以下, $$をフィルトレーション付き確率空間, $$をtime horizon とし, $$を時刻$$を満期とする割引債の時刻$$での価格とする($$).

 確率1で, 各$t$毎に$$は$$について微分可能かつ連続でその微分値は$$について有界とする. このとき時刻$$における, 時刻$$からの(瞬間的な)フォワードレート$$は, $$で定義される. 逆に, フォワードレート$$, $$が与えられたとき, 債券価格$$は, 定義から$$となる.

Heath, Jarrow, Morton[2]は, フォワードレート$$が次の確率微分方程式



(但し$, $$は$$適合な確率過程, $$は標準ブラウン運動($$) に従うと仮定して金利変動モデルのかなり一般的な枠組みを与えた.

 $$をスポットレートという. スポットレートの変動を確率過程としてモデル化したものはスポットレートモデルと呼ばれ, その下では, 債券価格$$は$ $となる. ただし, $$は同値マルチンゲール測度$$の下での期待値を表す.

 スポットレートモデルの代表例として, Vasicek[4]は, $$が確率過程


$$


($$, $$, $$は定数)に従うとするモデル(Vasicek モデル)を立てた. またCox, Ingersoll, Ross [1]は, $$が確率過程


$$


に従うとするモデル(C.I.R.モデル)を立てた.

 これらのモデルの下では, 時刻$T$を満期とする割引債価格の満たす確率微分方程式は,


$$


と書けるが, このとき$$は$$には依らないことが示される. この$$はリスクの市場価値と呼ばれる. リスクの市場価値$$を既知とするとき, 同値マルチンゲール測度$$は


$$$$


で与えられる. Vasicekモデルの割引債価格は


構文解析に失敗 (構文エラー): {\displaystyle \begin{eqnarray*} P(t,T) &=&A(T-t) \mbox{e}^{-B(T-t)r(t)} \\ B(t)&=&\frac{1-\mbox{e}^{-at}}{a} \\ A(t)&=&\exp \{-\frac{(B(t)-t)(a^2\bar{\phi}-\sigma^2/2)}{a^2} -\frac{\sigma^2B^2(t)}{4a} \}\\ \bar{\phi} &=& \frac{\phi -\sigma\lambda}{a} \end{eqnarray*}\, }


となり, C.I.R.モデルの割引債価格は


構文解析に失敗 (構文エラー): {\displaystyle \begin{eqnarray*} P(t,T) &=&A(T-t) \mbox{e}^{-B(T-t)r(t)} \\ B(t)&=&\frac{ 2(\mbox{e}^{-\gamma t}-1)}{(a+\gamma)(\mbox{e}^{-\gamma t}-1)+2\gamma} \\ A(t)&=&\left[\frac{ 2\gamma \mbox{e}^{(a+\gamma)t/2}}{(a+\gamma)(\mbox{e}^{-\gamma t}-1)+2\gamma} \right] ^{2a\bar{\phi}/\sigma^2}\\ \gamma &=& \sqrt{a^2 + 2\sigma^2} \\ \bar{\phi} &=& \frac{\phi -\sigma \sqrt{r_t}\lambda}{a} \end{eqnarray*}\, }


となる.

 HullとWhite[3]はVasicek モデルにおけるパラメータ$$を時刻$$の確定的な関数として拡張することにより, 市場で観測される [3] イールドカーブ(yield curve)に整合するモデルを提唱した. 具体的には次の通り. $$を割引債利回りのカーブとし, $$について2階微分可能と仮定する. このモデルでは, $$は同値マルチンゲール測度$$の下で


構文解析に失敗 (構文エラー): {\displaystyle \begin{eqnarray*} \mbox{d}r_t &=& (\phi (t)-a(t)r_t)\mbox{d}t+\sigma(t) \mbox{d}B^Q_t \\ && \quad B^Q\mbox{は}Q\mbox{ブラウン運動}, \phi (t),a(t),\sigma(t)\mbox{は確定的な関数} \\ \phi(t) &=& \int_0^t \sigma^2(u) \mbox{e}^{-2\int_u^t a(v)\mbox{\scriptsize d}v}\mbox{d}u +a(t)(ty(t))'+(ty(t))'' \end{eqnarray*}\, }


を満たし, 割引債価格は


構文解析に失敗 (MathML、ただし動作しない場合はSVGかPNGで代替(最新ブラウザーや補助ツールに推奨): サーバー「https://en.wikipedia.org/api/rest_v1/」から無効な応答 ("Math extension cannot connect to Restbase."):): {\displaystyle \begin{eqnarray*} P(t,T) &=&H_1(t,T) \mbox{e}^{-H_2(t,T)r(t)} \label{b.2}\\ H_2(t,T)&=&\int _t^T \mbox{e}^{-\int _t^s a(v)\mbox{\scriptsize d}v}\mbox{d}s \label{b.3}\\ H_1(t,T)&=&\exp \{\frac{1}{2}\int _t^T \sigma ^2(u) H_2^2(u,T)\mbox{d}u -\int _t^T \phi (u)H_2(u,T)\mbox{d}u\}\label{b.4} \end{eqnarray*}\, }


で得られる. これを変形すると,


構文解析に失敗 (構文エラー): {\displaystyle \begin{eqnarray*} P(t,T) &=&\frac{P(0,T)}{P(0,t)}\exp \left\{(\theta(t)-r(t))H_2(t,T)\frac{}{}\right.\\ & & \left. +\frac{1}{2}\int_t^T \sigma^2(u)H_2^2(u,T)\mbox{d}u -\frac{1}{2}\int_0^T \sigma^2(u)H_2^2(u,T)\mbox{d}u +\frac{1}{2}\int_0^t \sigma^2(u)H_2^2(u,t)\mbox{d}u \right\} \\ \theta (t) &=& \int_0^t \sigma^2(u) H_2 (u,t) \mbox{e}^{-\int _u^t a(v)\mbox{\scriptsize d}v}\mbox{d}u+(tY(t))' \end{eqnarray*}\, }


となる.



参考文献

[1] J. C. Cox, J. E. Ingersoll and S. A. Ross, "A Theory of the Term Structure of Interest Rates," Econometrica, 53 (1985), 385-407.

[2] D. Heath, R. Jarrow and A. Morton, "Bond Pricing and the Term Structure of Interest Rates: A New Methodology for Contingent Claims Valuation," Econometrica, 60 (1992), 77-105.

[3] J. Hull and A. White, "Pricing Interest-rate-derivative Securities," The Review of Financial Studies, 3 (1990), 573-592.

[4] Vasicek, O.A., "An equilibrium characterization of the term structure," Journal of Financial Economics, 5 (1977), 177-188.