《利益計画》

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【りえきけいかく (profit planning) 】

 企業の状態や企業が行う諸活動を, 貨幣尺度を用いて測定評価することにより, 資本の投下や費消, 稼得などのように価値的に表現することができる. 企業全体としての活動の有効性をこの価値空間の上で表しているものが利益である. 営業活動の大きさ(営業量)の違いは稼得される売上高の違いとなって, また活動のために必要とされる費用の違いとなってとらえられる. 結果として, 両者の差額である利益の上にも違いとなって表れる. 営業活動の大きさが利益に変動をもたらす構造を価値空間の上でとらえたものを利益発生構造と呼ぶ, 企業活動をこの利益発生構造の上で特徴づけることにより, 経営目的を達成するための企業活動を計画立てることが考えられる.

 すなわち利益計画とは, 特定の計画期間における経営目的の達成を目指す企業活動を, 利益発生構造の上で総合的に検討し, 目標利益とその達成のための構造を計画立てる過程およびその策定する計画のことである.

1. 計画期間の長さによる利益計画の区分

 利益計画は計画期間の長さの違いによって, 長期利益計画と短期利益計画とに大別される.

 長期利益計画は, 計画期間として通常3年から5年に対して策定する計画で, 経営戦略や長期の経営政策, 個別プロジェクト計画等を計画期間内の各年に実施案として埋め込みながら, 目標利益を中心とした経営目的実現のための経年的な利益発生構造の改変を計画立てるものである.

 短期利益計画は, 計画期間が通常1年で, 長期利益計画の初年度部分に相当するものである. ただし, 長期利益計画が一般に, 企業活動を網羅的ではあるが大枠的な利益発生構造として価値空間の上で計画立てるのに対し, 短期利益計画は当面の1年間を対象にして, 諸業務領域における全活動をその構造の内訳け要素としてとらえ, 利益を基準としてそれらを総合的に調整し, 目標利益と利益発生構造とを計画立てるものである.

 利益計画の具体的な実施方策は, 利益計画の内容を予算編成方針として提示することにより, 次に続く予算編成の過程で計画立てられる.

2. 目標利益設定の考え方

 利益計画においては目標利益の設定がその基礎となる. 目標利益の設定にあたっては, 大別して2通りの考え方がある. その1つは投下資本の収益性から導出するものであり, 他の1つは利益処分の必要額から積算するものである.

 前者は, 資本市場を意識したもので, 企業活動に投下されている投下資本に期待される収益性を投下資本利益率として算定し, それに企業が想定する投下資本額を掛けることによって目標利益を設定するものである.

 後者は, 利益の配分先である配当金や役員賞与, 内部留保について, それらの適正な額を算定した上で合計することにより目標利益を設定するものである. 適正な額の算定は, 既決の長期経営計画や資本・財務政策をもとにし, さらには他社の配当政策等も参考にして行われる.

 実際の目標利益の設定にあたっては, 通常両者の考え方からの検討がなされた上で設定される.

3. 利益計画のための分析図表

 投下資本利益率(=利益/投下資本)は, 価値空間の上で企業経営の効率性を計る代表的な指標である. この指標は, 売上高利益率(=利益/売上高)と投下資本回転率(=売上高/投下資本)の積として表すことができる.

 売上高利益率は利益と売上高の関係から決まってくるものであるから, 利益発生構造を売上高 (量) に対する総費用額の変動性としてとらえ, 両者の関係を分析するものとして利益図表 (profit chart) がある. また, 利益をあげるのに最低でも必要な売上高 (量) を分析するものとして損益分岐分析 (break-even analysis) がある.

 投下資本回転率は売上高と投下資本の間の関係から決まるものである. そこで, 売上高に対して投下資本が変動する関係を構造化(通常, 線形関係として表現)し, 両者の関係を分析するものとして資本図表 (capital chart) がある.

 さらに, 投下資本利益率は利益と投下資本の間の関係から決まるものであるから両者の関係を分析するものとして, 資本図表と利益図表を1つの図表に組合せた資本利益図表 (capital and profit chart) (利益計画図表とも言う) がある.

 これらの図表を用いて現状のもとでの目標利益達成の可能性を検討するとともに, 達成が困難な場合には現状の利益発生構造そのものを改善する手立てや改善の方向性を検討する. こうした検討の過程を支援するために, 企業活動を価値空間の上でとらえてモデル化したものに, シミュレーション機能や数理計画法による支援機能を持たせた利益計画モデル (profit planning model) も開発されている.

4. 利益計画の実行計画としての予算

 価値空間の上で立てられる利益計画は, それだけでは実際の企業経営に役立たない. 次に続く予算編成 (budget compilation) の過程でさらに, 各業務活動の実体(活動)空間上での実行計画をともなった予算として計画立てられる必要がある.

 予算編成にあたっては, 予想される企業の環境条件とともに利益発生構造を改変する方向性およびそのための前提とする政策や設定条件などを予算編成方針として提示する. 価値空間の上で計画立てられた利益発生構造を, この予算編成方針にもとづき各業務活動ごとに具体的な実体として条件づけ, その実現方法や実施活動の計画原案およびそれらを価値表現した予算原案として作成する. それら予算原案を利益計画にもとづいて全社的に調整し, 計画期間における全企業活動の体系立った計画として決定する.

 この予算編成の過程に各業務活動の管理責任者を参加させることは, 利益計画が意図する目標利益や経営目的の達成に強い動機づけを与えるものであり予算管理上有効なこととされている.