「《ロジスティクスネットワーク設計問題》」の版間の差分

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2007年7月19日 (木) 23:58時点における版

【ろじすてぃくすねっとわーくせっけいもんだい (logistics network design problem)】

 ロジスティクスネットワーク設計問題 (logistics network design problem)とは, 工場から倉庫を通過して最終的な顧客に至るまでの過程において, 物の流れ, 施設に関する最適化を目的とした問題の総称である.

 以下に主要な決定項目を示す.


1. 配置する適切な倉庫数の決定
2. 各倉庫の配置場所, 容量(能力)の決定
3. 各製品(群)を製造する工場(製造ライン)の決定
4. 各顧客(群)が各製品(群)の供給を受ける倉庫の決定
5. 輸送手段の決定


 ロジスティクスネットワーク設計問題は, ロジスティクスにおける意思決定の中で, 長期的影響を及ぼすものであることから, 戦略的なレベルの意思決定問題に分類される [2]. また研究の多くは実務への適用事例を中心として, 実際のデータや適用対象領域の特徴からモデル構築ならびにモデルへの入力データを整備する際の, 単純化や近似, データ集成の方法に関して報告している. 以下に適用事例研究の幾つかを示す.


  • 新製品投入時の製造場所, 流通チャネルの決定 [3]
  • リサイクルのためのリバースフローを考慮したロジスティクスネットワークの設計 [4]
  • グローバルロジスティクスネットワークの再設計 [1]


 実務におけるロジスティクスネットワーク設計問題による意思決定では, モデルへの入力データ整備作業が最も重要であり, 典型的には以下の作業項目より構成される.


1. データ収集
各施設の位置, 輸送手段に応じた輸送費用等, 入手可能な実際のデータを収集する.
2. データ集成
データに含まれる誤差分散減少のために, データ集成をおこなう. 典型的には, 各顧客は地理的な近接状況等により顧客群として, 各製品は同一チャネル上を流通するものに関して製品群としてグループ化される.
3. データ近似
施設間距離を直線距離として設定, 各顧客群に対するサービスレベルとして顧客群とその顧客群に供給をおこなう倉庫間の距離の上限を設定等の近似をおこなう.


 上記の作業で整備された入力データより, モデルの最適解の算出ならびにWhat-if分析(経営環境の仮想的な変化等の種々のシナリオに対する解の変化を見る), 感度分析(入力データの値を系統的に変化させたときの解の変化を見る)等の各種分析作業がおこなわれる. 最適解の算出, 分析作業を支援するシステムの構築に関しては, 例えばシムチレビ(D. Simchi-Levi)らはシステムが提供すべき機能に関して言及している [2].




参考文献

[1] B. C. Arntzen, G. C. Brown, T. P. Harrion and L. L. Trafton, "Global Supply Chain Management at Digital Equipment Corporation," Interfaces, 25 (1995), 69-93.

[2] J. Bramel and D. Simchi-Levi, The Logic of Logistics : Theory, Algorithms, and Applications for Logistics Management, Springer-Verlag, 1997.

[3] G. G. Brown, G. W. Graves and M. D. Honczarenko, "Design and Operation of A Multicommodity Production/Distribution System Using Primal Goal Decomposition," Management Science, 33 (1987), 1469-1480.

[4] A. M. Geoffrion and R. F. Powers, "Twenty Years of Strategic Distribution System Design: An Evolutionary Perspective," Interfaces, 25 (1995), 105-127.