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モデルライフサイクルにおけるモデルに関する活動の支援を構築し提供すること. モデルライフサイクルの全過程, また, モデルに関わるすべての活動を対象とする. 支援には, モデルを活用して特定の問題を解決するための支援, モデルを情報資産として再利用するための支援が含まれる. その実現技術と必要性の観点から, モデル管理研究は総合的な情報システム環境の実現を志向する.
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 [[モデル]] (model)には, 一般に, 形を真似る像的モデル, 物理的性質の類似性を利用する類似モデル, 論理的抽象的な記述をする記号モデルがある. [[モデル管理]] (modelmanagement)においてモデルといえば意思決定問題を記述する記号モデルを指すが, 数式モデル, 計算手続き, データモデルなどが含まれ, その含意は多様である.
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 モデル管理とはモデルの作成から廃棄に至る[[モデルライフサイクル]] (modeling life cycle)の全過程にわたるあらゆる活動(モデルの作成, 活用, 蓄積, 変更, 再利用, 合成, 統合等を含む)に関する支援を構築し提供することである. モデルライフサイクルが意思決定の過程と並行することから容易に想像されるように, モデル管理は1975年頃から意思決定支援システム研究のなかで議論され始めたが, 1980年代中期以降, 特に, [[構造化モデリング]](structured modeling) [3] が提唱されて以来, オペレーションズ・リサーチによる意思決定支援のための情報システム環境という意味あいが強くなった.
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 この間, モデル管理の対象としてのモデルの具体的内容は次第に変化してきた [2]. すなわち, 初期にはモデルを解く計算手続き, ないし, 計算プログラムの記述を指すのが主流であったが, 次第に, モデルを解く手続きへの入出力データの記述を指すようになり, 近年は, モデル型とその数値データの記述を指すことが多い. モデルライフサイクルの重要な成果物に, 問題記述, モデル, [[ソルバー]] (solver), 解および関連ドキュメントがある. ソルバーを管理対象としてその利用に係るすべての知識や作業を利用者に依存するのが第一の, 必要な形式でのデータの準備だけを利用者に依存するのが第二の, モデルの構築とデータの作成だけを依存するのが第三のモデル管理である.
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 ソルバーによって解かれるモデルは決定変数と様々な数値データによって記述され, もっとも具体的かつ個別的である. これを[[モデル具体例]] (model instance)という. モデル具体例の数値データの一部あるいは全部をパラメータとして代数的に表現したものが[[モデル型]] (model type)である. モデル型のパラメータに特定の数値データを割り当てることによって様々なモデル具体例を作ることができるから, モデル型はモデル具体例の集合を記述するものと解釈できる. モデル型は大きな集合を記述できるほど一般性が高いと言える. 割り当て問題のモデルに比べて輸送問題のモデルはより一般的であり, 標準的な線形計画問題のモデルはさらに一般性が高い.
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 情報技術を活用してモデル管理を実現するためには, モデルライフサイクルにおける様々な活動を形式的に記述し, 情報システム上で実施することができなければならない. この意味で[[モデル記述言語]] (model descriptionlanguage)とソルバーは重要な要素である. ソルバーを起動して問題を解くには, モデルの数値データをソルバーの仕様にあった形式で入力することが必要になる. この入力データはモデル具体例の1つの記述形式と考えられるので, ソルバー形式(solver-form)モデルと呼ばれる. これに対して, 第三の意味のモデルはモデル作成者の記述形式と考えることができるので, ユーザ定義(user-defined)モデルと呼ばれる. モデル記述言語はユーザ定義モデルを記述する人工言語である. モデル記述において, モデル型の記述とは独立にモデル具体例を記述できるという[[モデル/データ独立|モデル/データ独立]] (model/data independence), モデルを複数のソルバーへのデータ入力に利用できる[[モデル/ソルバー独立|モデル/ソルバー独立]] (model/solver independence)はモデルやソルバーの情報資源としての価値を高める上で重要である.
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 代表的なモデル記述言語にはその処理システムが付随しており, 正確性や完全性を自動チェックできるばかりでなく, 特定のソルバー向けにはソルバー形式モデルを自動生成する機能も持つ. このことからわかるように, モデル管理の研究では, モデルライフサイクルを問題記述から解まで, 意思決定問題の記述としてのモデルを次々に変換する過程ととらえることもできる. モデル記述言語はモデル構築の初期段階の情報を記述するものから完成したモデルを記述するものまで様々である. その中には, 数式モデルを構造化したテキスト形式に記述するもの, 実体-関連(entity-relationship)構造などのデータモデルを応用するもの, 述語論理など知識表現を応用するもの, グラフ文法などに基づいてグラフやネットワークを利用するもの, などがある [1].
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 モデル管理の研究は, 線形計画問題やネットワーク計画問題など, 効率的で汎用的な解法の知られた分野の数式モデル構築からソルバーによる解の導出までの過程という極めた限られた範囲に集中している. この範囲を拡大するとともに, さらに高度な支援を可能にすることが望まれる.
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 特定の問題を対象にモデルを構築し解く, いわゆる, 小規模モデル構築(modeling in-the-small)を対象にする研究ではモデル記述言語の記述能力を組み合わせ問題等に拡張する試み, モデル記述にモデルに関する情報(変数やパラメータの単位や次元, 式の意味, 対応するソルバー, 作成者など)を組み込む試み, より問題記述に近い記述から数式モデルを自動生成する試みなどが行われている. 既存のいくつかのモデルを組み合わせてより複雑大規模なモデルを構築して解く過程を対象にする大規模モデル構築(modelingin-the-large)の研究では, オブジェクト指向技術を応用するなどした[[モデル合成]] (model composition)や[[モデル統合]] (model integration)の研究, 合成や統合によって構築されたモデルとソルバーを結びつける研究, それらを支援するモデルやソルバーのデータベース化の研究, などがある [5]. モデル管理は意思決定支援の情報システム環境として実現されるのであり, 対話や視覚化といったインターフェースの研究も重要な分野である [4].
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 モデルを情報資源としてその利用を支援することは, 企業における知識管理の意味からも, 重要である. モデルの再利用にはモデルの等価性, モデルに対応する問題の等価性の判定が基本的条件となるが, その理論や技術はいまだ極めて不十分である.
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[1] A. Bharadwaj, J. Choobineh, A. Lo and B. Shetty, "Model Management Systems: A Survey," ''Annals of Operations Research'', '''38''' (1992), 17-67.
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[2] A. -M. Chang, C. W. Holsapple and A. B. Whinston, "Model Management Issues and Directions," ''Decision Support Systems'', '''9''' (1993), 19-37.
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[3] A. M. Geoffrion, "An Introduction to Structured Modeling," ''Management Science'', '''33''' (1987), 547-588.
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[4] C. V. Jones, ''Visualization and Optimization'', Kluwer Academic Publishers, Dordrecht, The Netherlands, 1996.
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[5] R. Krishnan, "Model Management: Survey, Future Research Directions and a Bibliography," ''ORSA CSTS Newsletter,'' '''14''' (1993), 1-8.
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[[category:システム分析・意思決定支援・特許|もでるかんり]]

2008年4月2日 (水) 16:58時点における最新版

【 もでるかんり (model management) 】

概要

モデルライフサイクルにおけるモデルに関する活動の支援を構築し提供すること. モデルライフサイクルの全過程, また, モデルに関わるすべての活動を対象とする. 支援には, モデルを活用して特定の問題を解決するための支援, モデルを情報資産として再利用するための支援が含まれる. その実現技術と必要性の観点から, モデル管理研究は総合的な情報システム環境の実現を志向する.

詳説

 モデル (model)には, 一般に, 形を真似る像的モデル, 物理的性質の類似性を利用する類似モデル, 論理的抽象的な記述をする記号モデルがある. モデル管理 (modelmanagement)においてモデルといえば意思決定問題を記述する記号モデルを指すが, 数式モデル, 計算手続き, データモデルなどが含まれ, その含意は多様である.

 モデル管理とはモデルの作成から廃棄に至るモデルライフサイクル (modeling life cycle)の全過程にわたるあらゆる活動(モデルの作成, 活用, 蓄積, 変更, 再利用, 合成, 統合等を含む)に関する支援を構築し提供することである. モデルライフサイクルが意思決定の過程と並行することから容易に想像されるように, モデル管理は1975年頃から意思決定支援システム研究のなかで議論され始めたが, 1980年代中期以降, 特に, 構造化モデリング(structured modeling) [3] が提唱されて以来, オペレーションズ・リサーチによる意思決定支援のための情報システム環境という意味あいが強くなった.

 この間, モデル管理の対象としてのモデルの具体的内容は次第に変化してきた [2]. すなわち, 初期にはモデルを解く計算手続き, ないし, 計算プログラムの記述を指すのが主流であったが, 次第に, モデルを解く手続きへの入出力データの記述を指すようになり, 近年は, モデル型とその数値データの記述を指すことが多い. モデルライフサイクルの重要な成果物に, 問題記述, モデル, ソルバー (solver), 解および関連ドキュメントがある. ソルバーを管理対象としてその利用に係るすべての知識や作業を利用者に依存するのが第一の, 必要な形式でのデータの準備だけを利用者に依存するのが第二の, モデルの構築とデータの作成だけを依存するのが第三のモデル管理である.

 ソルバーによって解かれるモデルは決定変数と様々な数値データによって記述され, もっとも具体的かつ個別的である. これをモデル具体例 (model instance)という. モデル具体例の数値データの一部あるいは全部をパラメータとして代数的に表現したものがモデル型 (model type)である. モデル型のパラメータに特定の数値データを割り当てることによって様々なモデル具体例を作ることができるから, モデル型はモデル具体例の集合を記述するものと解釈できる. モデル型は大きな集合を記述できるほど一般性が高いと言える. 割り当て問題のモデルに比べて輸送問題のモデルはより一般的であり, 標準的な線形計画問題のモデルはさらに一般性が高い.

 情報技術を活用してモデル管理を実現するためには, モデルライフサイクルにおける様々な活動を形式的に記述し, 情報システム上で実施することができなければならない. この意味でモデル記述言語 (model descriptionlanguage)とソルバーは重要な要素である. ソルバーを起動して問題を解くには, モデルの数値データをソルバーの仕様にあった形式で入力することが必要になる. この入力データはモデル具体例の1つの記述形式と考えられるので, ソルバー形式(solver-form)モデルと呼ばれる. これに対して, 第三の意味のモデルはモデル作成者の記述形式と考えることができるので, ユーザ定義(user-defined)モデルと呼ばれる. モデル記述言語はユーザ定義モデルを記述する人工言語である. モデル記述において, モデル型の記述とは独立にモデル具体例を記述できるというモデル/データ独立 (model/data independence), モデルを複数のソルバーへのデータ入力に利用できるモデル/ソルバー独立 (model/solver independence)はモデルやソルバーの情報資源としての価値を高める上で重要である.

 代表的なモデル記述言語にはその処理システムが付随しており, 正確性や完全性を自動チェックできるばかりでなく, 特定のソルバー向けにはソルバー形式モデルを自動生成する機能も持つ. このことからわかるように, モデル管理の研究では, モデルライフサイクルを問題記述から解まで, 意思決定問題の記述としてのモデルを次々に変換する過程ととらえることもできる. モデル記述言語はモデル構築の初期段階の情報を記述するものから完成したモデルを記述するものまで様々である. その中には, 数式モデルを構造化したテキスト形式に記述するもの, 実体-関連(entity-relationship)構造などのデータモデルを応用するもの, 述語論理など知識表現を応用するもの, グラフ文法などに基づいてグラフやネットワークを利用するもの, などがある [1].

 モデル管理の研究は, 線形計画問題やネットワーク計画問題など, 効率的で汎用的な解法の知られた分野の数式モデル構築からソルバーによる解の導出までの過程という極めた限られた範囲に集中している. この範囲を拡大するとともに, さらに高度な支援を可能にすることが望まれる.

 特定の問題を対象にモデルを構築し解く, いわゆる, 小規模モデル構築(modeling in-the-small)を対象にする研究ではモデル記述言語の記述能力を組み合わせ問題等に拡張する試み, モデル記述にモデルに関する情報(変数やパラメータの単位や次元, 式の意味, 対応するソルバー, 作成者など)を組み込む試み, より問題記述に近い記述から数式モデルを自動生成する試みなどが行われている. 既存のいくつかのモデルを組み合わせてより複雑大規模なモデルを構築して解く過程を対象にする大規模モデル構築(modelingin-the-large)の研究では, オブジェクト指向技術を応用するなどしたモデル合成 (model composition)やモデル統合 (model integration)の研究, 合成や統合によって構築されたモデルとソルバーを結びつける研究, それらを支援するモデルやソルバーのデータベース化の研究, などがある [5]. モデル管理は意思決定支援の情報システム環境として実現されるのであり, 対話や視覚化といったインターフェースの研究も重要な分野である [4].

 モデルを情報資源としてその利用を支援することは, 企業における知識管理の意味からも, 重要である. モデルの再利用にはモデルの等価性, モデルに対応する問題の等価性の判定が基本的条件となるが, その理論や技術はいまだ極めて不十分である.



参考文献

[1] A. Bharadwaj, J. Choobineh, A. Lo and B. Shetty, "Model Management Systems: A Survey," Annals of Operations Research, 38 (1992), 17-67.

[2] A. -M. Chang, C. W. Holsapple and A. B. Whinston, "Model Management Issues and Directions," Decision Support Systems, 9 (1993), 19-37.

[3] A. M. Geoffrion, "An Introduction to Structured Modeling," Management Science, 33 (1987), 547-588.

[4] C. V. Jones, Visualization and Optimization, Kluwer Academic Publishers, Dordrecht, The Netherlands, 1996.

[5] R. Krishnan, "Model Management: Survey, Future Research Directions and a Bibliography," ORSA CSTS Newsletter, 14 (1993), 1-8.