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'''【じんてきしげんかんり (human resource management)】'''
 
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=== 概要 ===
  
 
経営資源のうち人的資源を管理の対象とし,企業の労働サービスの需要の充足, 労働者の就業ニーズの充足,労使関係の調整と安定維持の機能を果たすものである. その管理領域は,大別して雇用管理, 報酬管理, 労使関係管理の3つからなる.この管理は, 企業の戦略に基づいて行われる点で,従来の人事管理や労務管理とは異なる.
 
経営資源のうち人的資源を管理の対象とし,企業の労働サービスの需要の充足, 労働者の就業ニーズの充足,労使関係の調整と安定維持の機能を果たすものである. その管理領域は,大別して雇用管理, 報酬管理, 労使関係管理の3つからなる.この管理は, 企業の戦略に基づいて行われる点で,従来の人事管理や労務管理とは異なる.
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=== 詳説 ===
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 [[人的資源管理]]という言葉は, 1970年代後半より, 人事管理あるいは労務管理に代わってアメリカで用い始められた. この流れの背景には2つの理由がある. 第1は, 従業員についての理解の変化がある. 従来の人事管理においては従業員は単なる労働力として把握され, 労働力としての従業員の最有効利用を目的としていた. しかし,人的資源管理においては, 人間行動を経済的要因のみならず, 社会的・心理的要因をも含めた多用な側面より理解し, その目的は, 従業員の潜在的な能力を顕在化させ,かつ開発することである. 第2は, 人事管理が労働力の最有効利用と経営秩序の維持を目的としているのに対して, 人的資源管理においては, 経営戦略と従業員の能力開発とを積極的に結びつけることを目的としていることである.
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 このような人的資源管理は, 企業を構成する経営資源のうち人的資源にかかわる管理機能を担うものである. その具体的機能は, 次の3つである. 第1は, 企業の必要とする労働サービスを提供可能なようにその提供者である労働者すなわち人的資源を確保し, その合理的利用を図る機能である. 第2は, 労働サービスの提供者である労働者の就業ニーズを適切に把握し, その合理的な充足を図る機能である. 第3は, 労使関係における利害調整, 対立解消, 安定維持を図る機能である. これは, 第1の機能と第2の機能の両立を図るための調整機能であり, 第1と第2が円滑に機能するための前提条件となる.
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 この人的資源管理を具体的な管理領域で分類すると, 大きく雇用管理, 報酬管理,労使関係管理に分けることができる.
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 雇用管理は, 企業の必要とする労働サービスの確保に関するものであり, 採用管理, 配置・異動, 教育訓練・能力開発, 労働時間管理, 雇用調整, 退職管理などからなり, これら一連の過程の中で従業員の能力と仕事とをできうる限り適合させるものである.
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 雇用管理の第1段階が採用である. 採用とは, 企業が必要とする労働サービス需要を充足するために企業外から労働者を調達することである. 採用にあたっては, まず必要な採用数を算定し, 採用計画を策定する. この採用は, 採用時期により, 定期採用と随時採用ないし不定期採用に分けられる. 定期採用は, 日本においては新規学卒者である未経験労働者を対象としており, 4月に行われるのが一般的である. 不定期採用は, 欠員補充型の即戦力採用のために行われる. しかし, 通年採用を実施する企業も現れ始めている.
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 新規学卒者の採用の場合, 採用後の配属先を確定して採用活動を行う企業は一般的ではなく, 入社後に具体的な配属先職場が決定する. これを, 初任配属という. この初任配属においては, 配属後の一定期間を, 従業員の適性を観察する期間である仮配属機関として位置付けている企業も多い. 初任配属後, 通常一定期間で人事異動という職場間の移動がある. 人事異動には, 職位や役職の変更, 処遇や能力等級の変更を意味するタテ異動, 職務変更や部門内移動や部門間・個別間移動を意味するヨコ異動, 出向や転籍や派遣にみられるような社外異動, 留学のような教育異動がある. これらの人事異動の目的は, 1) 適材適所の配置による個人能力・意欲の向上, 並びに組織力の向上, 2) 長期的視点よりの個人能力の育成, 3) マンネリズムの打破, 4) 部門間セクショナリズムの打破, である. 最近, この異動に関して個人の希望を生かす制度を採用する企業が増えつつある. 仕事やキャリアなどに関する希望を会社に申告する自己申告制度や, 担当する仕事を明示し, 希望者を社内より募る社内人材公募制度である.
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 教育訓練は, 仕事の遂行に必要な職務知識, 技術, 判断力を従業員に学習させる一連の活動であり, 能力開発は, 長期的視点から必要とされる職務知識や技術を習得させ, 従業員の自己啓発活動を展開しやすくするための活動である. 能力開発は, 従業員の潜在能力の拡充が目的であるため, 技術革新や管理革新に伴い重視されつつある. そのため, 新入社員から経営者までを対象とする階層別教育訓練に加えて職能的専門家を育成するための職能別教育訓練も展開されている. 教育訓練・能力開発の具体的方法は, 職場内訓練であるOJT(on-the-job training), 職場外訓練であるOff-JT(off-the-job training), 自己啓発を3つの柱として組み合わされている.
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 雇用調整とは, 企業が必要とする労働サービス需要の変化に対応して労働サービスの供給量や質的構成を変動させることであるが, 一般的には, 景気後退気など労働サービス需要の減少期における対応を意味する. 雇用調整の方法には, 労働者数や労働時間数いずれかによる数量調整と, 賃金などを削減する賃金調整がある. 数量調整には, 新規採用削減, 退職者不補充, 出向・転籍, 希望退職者募集, 解雇, 労働時間削減などがある. 賃金調整には, 賞与の削減, ベースアップの水準削減, 定期昇給の停止・延期などがある.
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 報酬管理は, 賃金管理, 人事考課, 昇進管理, 付加給付管理などからなる.
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 賃金は労働の対価であり, 労働者にとっては主要な所得の源泉である. それゆえ,賃金管理は, 企業で支払われる賃金額と賃金制度を対象とする管理としてなされる.賃金額には, 賃金総額と個別賃金があるが, 日本においては賃金交渉がベースアップ交渉であるため, 賃金総額の決定が賃金管理の主要課題である. 個別の賃上げ額は,賃上げ原資の決定後, 個人別の賃金引上げ額が決定される. 賃金制度においては, 賃金形態と賃金体系が大きな柱である. 賃金形態は, 時間賃金と出来高賃金に分けられる. 時間賃金は, 働いた時間を基準に支払われる賃金であり, 労働サービスの給付量と直接結びつくものではない. 一方, 出来高賃金は, 労働サービスの給付量と直接結びついた賃金であり, 能率給とも呼ばれる. 現実の賃金は, 時間賃金と出来高賃金とを組み合わせたものとなっている. 賃金体系は, 賃金原資を従業員間に配分する基準であり, 基準内賃金(基本給, 加給, 家族手当, 地域手当, 住宅手当など)と基準外賃金(通勤手当, 時間外手当, 日直・宿泊手当, 呼出手当など)からなる. 基本給は, 賃金の主要項目であり, 大別して仕事給, 属人給, 総合決定給の3つがある.
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 昇給, 賞与, 昇格・昇進および能力開発等の諸決定に役立てるため, 日常の勤務や実績を通じて評価をするのが人事考課である. 人事考課には, 能力考課(職務遂行能力の評価と今後の予測), 態度考課(仕事への取り組み姿勢の評価)そして業績考課(能力の発揮度の評価)がある. また, その評価方法には, 集団内の他のメンバーと比較して評価を決める相対評価と本人に期待する基準を軸にして評価する絶対評価がある. 相対評価は, 昇給, 賞与, 昇格・昇進のための考課に適している. 一方, 絶対評価は, 能力開発のための効果に適している.
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 労使関係管理は, 労働者の職場環境や仕事や報酬に関する不満や要望を吸い上げ,労働サービスの提供が円滑に行われる条件を整備し, 生産阻害や生産性低下を防止することを目的とするものである. 労使関係管理には, 労働組合をとおした不満や要望の調整や解消を行う集団的労使関係の管理と, 個々の労働者の不満や要望の調整や解消を行う個別的労使関係の管理がある. 集団的労使関係の管理の方法には, 労働・就業条件決定の場となる団体交渉, 交渉合意内容を公式に確認する労働協約・協定, 協約・協定の運用上の公正を確保する苦情処理などがある. さらに今日では, 労働組合とのいっそう円滑な関係を維持するために, 労使協議や経営参加の施策が加わっている. また, 最近, 企業内の配置や昇進などに対して自己責任に基づく市場原理を導入する動きが強まっている. 配置に関する自己申告制や目標管理に基づく年棒制の導入などは, その現れである. このように, 上司と部下の交渉により賃金や雇用が決められるケースが増えつつあり, 個別的労使関係の重要性は高まっている.
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'''参考文献'''
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[1] 今野浩一郎, 『人事管理入門』, 日本経済新聞社, 1996.
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[2] 森五郎編著, 岩出博, 菊野一雄, 重里俊行, 『現代日本の人事労務管理』, 有斐閣, 1995.
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[3] 亀山直幸編, 『雇用管理』, 日本労働研究機構, 1997.
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[4] 白井泰四郎, 『労使関係論』, 日本労働研究機構, 1996.
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[[category:企画・開発・プロジェクト・品質・ヒューマン|じんてきしげんかんり]]

2008年4月2日 (水) 16:16時点における最新版

【じんてきしげんかんり (human resource management)】

概要

経営資源のうち人的資源を管理の対象とし,企業の労働サービスの需要の充足, 労働者の就業ニーズの充足,労使関係の調整と安定維持の機能を果たすものである. その管理領域は,大別して雇用管理, 報酬管理, 労使関係管理の3つからなる.この管理は, 企業の戦略に基づいて行われる点で,従来の人事管理や労務管理とは異なる.

詳説

 人的資源管理という言葉は, 1970年代後半より, 人事管理あるいは労務管理に代わってアメリカで用い始められた. この流れの背景には2つの理由がある. 第1は, 従業員についての理解の変化がある. 従来の人事管理においては従業員は単なる労働力として把握され, 労働力としての従業員の最有効利用を目的としていた. しかし,人的資源管理においては, 人間行動を経済的要因のみならず, 社会的・心理的要因をも含めた多用な側面より理解し, その目的は, 従業員の潜在的な能力を顕在化させ,かつ開発することである. 第2は, 人事管理が労働力の最有効利用と経営秩序の維持を目的としているのに対して, 人的資源管理においては, 経営戦略と従業員の能力開発とを積極的に結びつけることを目的としていることである.

 このような人的資源管理は, 企業を構成する経営資源のうち人的資源にかかわる管理機能を担うものである. その具体的機能は, 次の3つである. 第1は, 企業の必要とする労働サービスを提供可能なようにその提供者である労働者すなわち人的資源を確保し, その合理的利用を図る機能である. 第2は, 労働サービスの提供者である労働者の就業ニーズを適切に把握し, その合理的な充足を図る機能である. 第3は, 労使関係における利害調整, 対立解消, 安定維持を図る機能である. これは, 第1の機能と第2の機能の両立を図るための調整機能であり, 第1と第2が円滑に機能するための前提条件となる.

 この人的資源管理を具体的な管理領域で分類すると, 大きく雇用管理, 報酬管理,労使関係管理に分けることができる.

 雇用管理は, 企業の必要とする労働サービスの確保に関するものであり, 採用管理, 配置・異動, 教育訓練・能力開発, 労働時間管理, 雇用調整, 退職管理などからなり, これら一連の過程の中で従業員の能力と仕事とをできうる限り適合させるものである.

 雇用管理の第1段階が採用である. 採用とは, 企業が必要とする労働サービス需要を充足するために企業外から労働者を調達することである. 採用にあたっては, まず必要な採用数を算定し, 採用計画を策定する. この採用は, 採用時期により, 定期採用と随時採用ないし不定期採用に分けられる. 定期採用は, 日本においては新規学卒者である未経験労働者を対象としており, 4月に行われるのが一般的である. 不定期採用は, 欠員補充型の即戦力採用のために行われる. しかし, 通年採用を実施する企業も現れ始めている.

 新規学卒者の採用の場合, 採用後の配属先を確定して採用活動を行う企業は一般的ではなく, 入社後に具体的な配属先職場が決定する. これを, 初任配属という. この初任配属においては, 配属後の一定期間を, 従業員の適性を観察する期間である仮配属機関として位置付けている企業も多い. 初任配属後, 通常一定期間で人事異動という職場間の移動がある. 人事異動には, 職位や役職の変更, 処遇や能力等級の変更を意味するタテ異動, 職務変更や部門内移動や部門間・個別間移動を意味するヨコ異動, 出向や転籍や派遣にみられるような社外異動, 留学のような教育異動がある. これらの人事異動の目的は, 1) 適材適所の配置による個人能力・意欲の向上, 並びに組織力の向上, 2) 長期的視点よりの個人能力の育成, 3) マンネリズムの打破, 4) 部門間セクショナリズムの打破, である. 最近, この異動に関して個人の希望を生かす制度を採用する企業が増えつつある. 仕事やキャリアなどに関する希望を会社に申告する自己申告制度や, 担当する仕事を明示し, 希望者を社内より募る社内人材公募制度である.

 教育訓練は, 仕事の遂行に必要な職務知識, 技術, 判断力を従業員に学習させる一連の活動であり, 能力開発は, 長期的視点から必要とされる職務知識や技術を習得させ, 従業員の自己啓発活動を展開しやすくするための活動である. 能力開発は, 従業員の潜在能力の拡充が目的であるため, 技術革新や管理革新に伴い重視されつつある. そのため, 新入社員から経営者までを対象とする階層別教育訓練に加えて職能的専門家を育成するための職能別教育訓練も展開されている. 教育訓練・能力開発の具体的方法は, 職場内訓練であるOJT(on-the-job training), 職場外訓練であるOff-JT(off-the-job training), 自己啓発を3つの柱として組み合わされている.

 雇用調整とは, 企業が必要とする労働サービス需要の変化に対応して労働サービスの供給量や質的構成を変動させることであるが, 一般的には, 景気後退気など労働サービス需要の減少期における対応を意味する. 雇用調整の方法には, 労働者数や労働時間数いずれかによる数量調整と, 賃金などを削減する賃金調整がある. 数量調整には, 新規採用削減, 退職者不補充, 出向・転籍, 希望退職者募集, 解雇, 労働時間削減などがある. 賃金調整には, 賞与の削減, ベースアップの水準削減, 定期昇給の停止・延期などがある.

 報酬管理は, 賃金管理, 人事考課, 昇進管理, 付加給付管理などからなる.

 賃金は労働の対価であり, 労働者にとっては主要な所得の源泉である. それゆえ,賃金管理は, 企業で支払われる賃金額と賃金制度を対象とする管理としてなされる.賃金額には, 賃金総額と個別賃金があるが, 日本においては賃金交渉がベースアップ交渉であるため, 賃金総額の決定が賃金管理の主要課題である. 個別の賃上げ額は,賃上げ原資の決定後, 個人別の賃金引上げ額が決定される. 賃金制度においては, 賃金形態と賃金体系が大きな柱である. 賃金形態は, 時間賃金と出来高賃金に分けられる. 時間賃金は, 働いた時間を基準に支払われる賃金であり, 労働サービスの給付量と直接結びつくものではない. 一方, 出来高賃金は, 労働サービスの給付量と直接結びついた賃金であり, 能率給とも呼ばれる. 現実の賃金は, 時間賃金と出来高賃金とを組み合わせたものとなっている. 賃金体系は, 賃金原資を従業員間に配分する基準であり, 基準内賃金(基本給, 加給, 家族手当, 地域手当, 住宅手当など)と基準外賃金(通勤手当, 時間外手当, 日直・宿泊手当, 呼出手当など)からなる. 基本給は, 賃金の主要項目であり, 大別して仕事給, 属人給, 総合決定給の3つがある.

 昇給, 賞与, 昇格・昇進および能力開発等の諸決定に役立てるため, 日常の勤務や実績を通じて評価をするのが人事考課である. 人事考課には, 能力考課(職務遂行能力の評価と今後の予測), 態度考課(仕事への取り組み姿勢の評価)そして業績考課(能力の発揮度の評価)がある. また, その評価方法には, 集団内の他のメンバーと比較して評価を決める相対評価と本人に期待する基準を軸にして評価する絶対評価がある. 相対評価は, 昇給, 賞与, 昇格・昇進のための考課に適している. 一方, 絶対評価は, 能力開発のための効果に適している.

 労使関係管理は, 労働者の職場環境や仕事や報酬に関する不満や要望を吸い上げ,労働サービスの提供が円滑に行われる条件を整備し, 生産阻害や生産性低下を防止することを目的とするものである. 労使関係管理には, 労働組合をとおした不満や要望の調整や解消を行う集団的労使関係の管理と, 個々の労働者の不満や要望の調整や解消を行う個別的労使関係の管理がある. 集団的労使関係の管理の方法には, 労働・就業条件決定の場となる団体交渉, 交渉合意内容を公式に確認する労働協約・協定, 協約・協定の運用上の公正を確保する苦情処理などがある. さらに今日では, 労働組合とのいっそう円滑な関係を維持するために, 労使協議や経営参加の施策が加わっている. また, 最近, 企業内の配置や昇進などに対して自己責任に基づく市場原理を導入する動きが強まっている. 配置に関する自己申告制や目標管理に基づく年棒制の導入などは, その現れである. このように, 上司と部下の交渉により賃金や雇用が決められるケースが増えつつあり, 個別的労使関係の重要性は高まっている.



参考文献

[1] 今野浩一郎, 『人事管理入門』, 日本経済新聞社, 1996.

[2] 森五郎編著, 岩出博, 菊野一雄, 重里俊行, 『現代日本の人事労務管理』, 有斐閣, 1995.

[3] 亀山直幸編, 『雇用管理』, 日本労働研究機構, 1997.

[4] 白井泰四郎, 『労使関係論』, 日本労働研究機構, 1996.