「《効率性》」の版間の差分

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 DEAは事業体(以降, DMU)の効率性を測定し, 評価するための方法である. 最も基本的な効率性の尺度は, CCRモデルやBCCモデルで評価される比例的効率性尺度である. これらの二つの尺度は入出力値の単位を変更しても:その値は変わらない. このことを[[単位不変 (DEAにおける)|単位不変]] (units invariance)と呼ぶ. 加法モデルにはCCRモデルやBCCモデルのように効率性を評価する一般的に用いられている尺度は存在しないが, 加法モデルに対してもいくつかの効率性尺度が提案されている. その中の一つに[[スラック基準効率値]] (slacks-based measure of efficiency) [4]がある.  
 
 DEAは事業体(以降, DMU)の効率性を測定し, 評価するための方法である. 最も基本的な効率性の尺度は, CCRモデルやBCCモデルで評価される比例的効率性尺度である. これらの二つの尺度は入出力値の単位を変更しても:その値は変わらない. このことを[[単位不変 (DEAにおける)|単位不変]] (units invariance)と呼ぶ. 加法モデルにはCCRモデルやBCCモデルのように効率性を評価する一般的に用いられている尺度は存在しないが, 加法モデルに対してもいくつかの効率性尺度が提案されている. その中の一つに[[スラック基準効率値]] (slacks-based measure of efficiency) [4]がある.  
  
 これらの効率性尺度は技術的要素(金銭以外の数値)やコスト的要素の両方を含んでいる. それに対して, 入力要素を技術的要素に限定して, コスト的要素は別の形で取り入れる効率性の評価法も考えられる. [[コスト効率性 (DEAにおける)|コスト効率性]] (cost efficiency) の尺度 $<math>CE</math>$ は, 評価対象のDMU $<math>a</math>$の実際コスト $<math>CX</math>$ に対する最小コスト $<math>MC</math>$ の比によって表すことができる. ここで, $<math>c_{ia}</math>$は DMU $<math>a</math>$ の入力 $<math>i</math>$ のコスト, $<math>X_{ij}</math>$は DMU $<math>j</math>$ の入力 $<math>i</math>$ の値, $<math>Y_{rj}</math>$ はDMU $<math>j</math>$ の出力 $<math>r</math>$ の値とする.  
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 これらの効率性尺度は技術的要素(金銭以外の数値)やコスト的要素の両方を含んでいる. それに対して, 入力要素を技術的要素に限定して, コスト的要素は別の形で取り入れる効率性の評価法も考えられる. [[コスト効率性 (DEAにおける)|コスト効率性]] (cost efficiency) の尺度 <math>CE\, </math> は, 評価対象のDMU <math>a\, </math>の実際コスト <math>CX\, </math> に対する最小コスト <math>MC\, </math> の比によって表すことができる. ここで, <math>c_{ia}\, </math>は DMU <math>a\, </math> の入力 <math>i\, </math> のコスト, <math>X_{ij}\, </math>は DMU <math>j\, </math> の入力 <math>i\, </math> の値, <math>Y_{rj}\, </math> はDMU <math>j\, </math> の出力 <math>r\, </math> の値とする.  
  
  
<math>CE = \frac{MC}{CX}\ ,</math> ただし,  
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<center><math>CE = \frac{MC}{CX}\ ,\, </math> ただし, <math>CX = \sum_{i=1}^m c_{ia} X_{ia}\, </math>である. </center>
<math>CX = \sum_{i=1}^m c_{ia} X_{ia}</math>である.  
 
  
  
最小コスト $<math>MC</math>$ は, 以下のモデルを解いたときの目的関数値として, 計算される. このとき, $<math>x_{ia}</math>$は最小コストを実現する入力 $<math>i</math>$ の値(最適入力値)である.  
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最小コスト <math>MC\, </math> は, 以下のモデルを解いたときの目的関数値として, 計算される. このとき, <math>x_{ia}\, </math>は最小コストを実現する入力 <math>i\, </math> の値(最適入力値)である.  
  
  
\begin{eqnarray*}
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<table align="center">
\mbox{minimize}   && MC \equiv \sum_{i=1}^m c_{ia} x_{ia}  
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<tr>
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<td width="100"><math>\mbox{minimize}\, </math> </td>
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<td><math>MC \equiv \sum_{i=1}^m c_{ia} x_{ia}\, </math></td>
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</tr>
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<tr>
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<td><math>\mbox{subject to}\, </math></td>
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<td><math>\sum_{j=1}^{n} X_{ij} \lambda_j \leq x_{ia}\ (i=1,\ldots,m)\ ,\, </math> </td>
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</tr>
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<tr>
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<td></td>
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<td><math>\sum_{j=1}^{n} Y_{rj} \lambda_j \geq Y_{ra}\ (r=1,\ldots,k)\ ,\, </math> </td>
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</tr>
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<tr>
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<td></td>
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<td><math>L \leq \sum_{j=1}^{n} \lambda_j \leq U\ ,\, </math> </td>
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<tr>
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<td></td>
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<td><math>\lambda_j \geq 0\ (j=1,\ldots,n)\ .\, </math></td>
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</tr>
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</table>
  
\mbox{subject to}
 
          && \sum_{j=1}^{n} X_{ij} \lambda_j \leq x_{ia}\ (i=1,\ldots,m)\ ,
 
  
          && \sum_{j=1}^{n} Y_{rj} \lambda_j \geq Y_{ra}\ (r=1,\ldots,k)\ ,  
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 技術効率性尺度 <math>TE\, </math> に対するコスト効率性尺度 <math>CE\, </math> の比は[[配分効率性]] (allocative efficiency) を測る尺度 <math>AE\, </math> となる.
  
          && L \leq \sum_{j=1}^{n} \lambda_j \leq U\ ,
 
  
          && \lambda_j \geq 0\ (j=1,\ldots,n)\ .
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<center><math>AE = \frac{CE}{TE}\, </math></center>
 
 
\end{eqnarray*}
 
 
 
 
 
 技術効率性尺度 $<math>TE</math>$ に対するコスト効率性尺度 $<math>CE</math>$ の比は[[配分効率性]] (allocative efficiency) を測る尺度 $<math>AE</math>$ となる.
 
 
 
 
 
:<math>AE = \frac{CE}{TE}</math>
 
  
  
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 DEAの効率性評価法の最大の特徴は, 評価対象のDMUにとって最も都合の良いように評価することである. それに対して, [[インバーテドDEA]] (inverted DEA)は非効率性の度合いによる評価法であり, [[クロス効率値]] (cross efficiency) [2] は他のDMUの視点から見た評価法であるという点で, 通常のDEAの評価法とは異なる.  
 
 DEAの効率性評価法の最大の特徴は, 評価対象のDMUにとって最も都合の良いように評価することである. それに対して, [[インバーテドDEA]] (inverted DEA)は非効率性の度合いによる評価法であり, [[クロス効率値]] (cross efficiency) [2] は他のDMUの視点から見た評価法であるという点で, 通常のDEAの評価法とは異なる.  
  
 インバーテドDEAは以下のモデルを解くことによって, 非効率性の度合いを評価する. ここで, 入力乗数を $<math>v_i</math>$, 出力乗数を $<math>u_r</math>$ とする.  
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 インバーテドDEAは以下のモデルを解くことによって, 非効率性の度合いを評価する. ここで, 入力乗数を <math>v_i\, </math>, 出力乗数を <math>u_r\, </math> とする.  
  
  
:<math>\begin{array}{lll}
+
<table align="center">
\mbox{maximize} & &  d_a \equiv \left.\sum_{i=1}^{m} X_{ia} v_{i}
+
<tr>
   \right/ \sum_{r=1}^{k} Y_{ra} u_{r} \\
+
<td width="100"><math>\mbox{maximize}\, </math></td>
\mbox{subject to}& & \left.\sum_{i=1}^{m} X_{ij} v_{i} \right/ \sum_{r=1}^{k}
+
<td><math>d_a \equiv \left.\sum_{i=1}^{m} X_{ia} v_{i}
                         Y_{rj} u_{r} \leq 1\ \ (j=1,\ldots,n) , \\
+
   \right/ \sum_{r=1}^{k} Y_{ra} u_{r}\, </math></td>
                  & & v_{i} \geq 0 \ (i=1,\ldots,m), \mbox{\quad}
+
</tr>
                       u_{r} \geq 0 \ (r=1,\ldots,k)\ .
+
<tr>
\end{array}</math>
+
<td><math>\mbox{subject to}\, </math></td>
 +
<td><math>\left.\sum_{i=1}^{m} X_{ij} v_{i} \right/ \sum_{r=1}^{k}
 +
                         Y_{rj} u_{r} \leq 1\ \ (j=1,\ldots,n) , \, </math></td>
 +
</tr>
 +
<tr>
 +
<td></td>
 +
<td><math>v_{i} \geq 0 \ (i=1,\ldots,m), \qquad
 +
                       u_{r} \geq 0 \ (r=1,\ldots,k) .\, </math></td>
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</tr>
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</table>
  
  
$<math>d_a^*$</math> をIDEA非効率値と呼び, $<math>0<d_a^*<1</math>$ であればIDEA効率的, $<math>d_a^*=1</math>$ であればIDEA非効率的と呼ぶ.  
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<math>d_a^*\, </math> をIDEA非効率値と呼び, <math>0<d_a^*<1\, </math> であればIDEA効率的, <math>d_a^*=1\, </math> であればIDEA非効率的と呼ぶ.  
  
 一方, クロス効率値は, 評価対象のDMUの効率値を求めるときに得られる最適な乗数を用いて計算される評価対象以外のDMUの効率値のことである. 評価対象のDMUを  $<math>a</math>$ とすると, DMU $<math>j</math>$ のクロス効率値 $<math>\eta_{ja}</math>$
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 一方, クロス効率値は, 評価対象のDMUの効率値を求めるときに得られる最適な乗数を用いて計算される評価対象以外のDMUの効率値のことである. 評価対象のDMUを  <math>a\, </math> とすると, DMU <math>j\, </math> のクロス効率値 <math>\eta_{ja}\, </math> は
  
  
<math>\eta_{ja} = \frac{\displaystyle{\sum_{r=1}^{k} Y_{rj}
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<center><math>\eta_{ja} = \frac{\displaystyle{\sum_{r=1}^{k} Y_{rj}
 
u_{ra}^*}}{\displaystyle{\sum_{i=1}^{m} X_{ij} v_{ia}^*}}\;\;\;\;\;  
 
u_{ra}^*}}{\displaystyle{\sum_{i=1}^{m} X_{ij} v_{ia}^*}}\;\;\;\;\;  
   (j=1,\ldots,n\ ;\ a=1,\ldots,n)</math>  
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   (j=1,\ldots,n\ ;\ a=1,\ldots,n)\, </math></center>  
  
  
で計算される. ここで, $<math>v_{ia}^*</math>$, $<math>u_{ra}^*</math>$ は DMU $<math>a</math>$ を評価対象としてモデルを解いたときに得られる最適乗数である.  
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で計算される. ここで, <math>v_{ia}^*\, </math>, <math>u_{ra}^*\, </math> は DMU <math>a\, </math> を評価対象としてモデルを解いたときに得られる最適乗数である.  
  
 CCRモデルやBCCモデルなどとは異なる生産可能集合による評価法もある. [[自由処分性]] (free disposal)は, DMU 同士の支配・被支配関係をもとに効率性を評価する考え方である. 以下の定式化により, その効率値 $<math>\theta^*</math>$ を計算することができる.  
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 CCRモデルやBCCモデルなどとは異なる生産可能集合による評価法もある. [[自由処分性]] (free disposal)は, DMU 同士の支配・被支配関係をもとに効率性を評価する考え方である. 以下の定式化により, その効率値 <math>\theta^*\, </math> を計算することができる.  
  
  
\begin{eqnarray*}
+
<table align="center">
\mbox{minimize}   && \theta  
+
<tr>
 
+
<td width="100"><math>\mbox{minimize}\, </math> </td>
\mbox{subject to}&& \theta X_{ia} \geq \sum_{j=1}^{n} X_{ij} \lambda_j
+
<td><math>\theta\, </math> </td>
                     (i=1,\ldots,m) ,  
+
</tr>
 
+
<tr>
          && \sum_{j=1}^{n} Y_{rj} \lambda_j \geq Y_{ra}\ (r=1,\ldots,k),  
+
<td><math>\mbox{subject to}\, </math></td>
 
+
<td><math>\theta X_{ia} \geq \sum_{j=1}^{n} X_{ij} \lambda_j
          && \sum_{j=1}^{n} \lambda_j = 1\ ,  
+
                     (i=1,\ldots,m) ,\, </math> </td>
 
+
</tr>
          && \lambda_j \in \{0,1\} \ (j=1,\ldots,n)\ .
+
<tr>
 
+
<td></td>
\end{eqnarray*}
+
<td><math>\sum_{j=1}^{n} Y_{rj} \lambda_j \geq Y_{ra}\ (r=1,\ldots,k),\, </math> </td>
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</tr>
 +
<tr>
 +
<td></td>
 +
<td><math>\sum_{j=1}^{n} \lambda_j = 1\ ,\, </math> </td>
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</tr>
 +
<tr>
 +
<td></td>
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<td><math>\lambda_j \in \{0,1\} \ (j=1,\ldots,n)\ .\, </math></td>
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</table>
  
  
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[5] W. W. Cooper, L. M. Seiford and K. Tone, ''Data Envelopment Analysis, A Comprehensive Text with Models, Applications, References and DEA-Solver Software'', Kluwer Academic Publishers, 1999.
 
[5] W. W. Cooper, L. M. Seiford and K. Tone, ''Data Envelopment Analysis, A Comprehensive Text with Models, Applications, References and DEA-Solver Software'', Kluwer Academic Publishers, 1999.
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[[category:DEA(包絡分析法)|こうりつせい]]

2007年8月7日 (火) 17:12時点における最新版

【こうりつせい (efficiency) 】

 DEAは事業体(以降, DMU)の効率性を測定し, 評価するための方法である. 最も基本的な効率性の尺度は, CCRモデルやBCCモデルで評価される比例的効率性尺度である. これらの二つの尺度は入出力値の単位を変更しても:その値は変わらない. このことを単位不変 (units invariance)と呼ぶ. 加法モデルにはCCRモデルやBCCモデルのように効率性を評価する一般的に用いられている尺度は存在しないが, 加法モデルに対してもいくつかの効率性尺度が提案されている. その中の一つにスラック基準効率値 (slacks-based measure of efficiency) [4]がある.

 これらの効率性尺度は技術的要素(金銭以外の数値)やコスト的要素の両方を含んでいる. それに対して, 入力要素を技術的要素に限定して, コスト的要素は別の形で取り入れる効率性の評価法も考えられる. コスト効率性 (cost efficiency) の尺度 は, 評価対象のDMU の実際コスト に対する最小コスト の比によって表すことができる. ここで, は DMU の入力 のコスト, は DMU の入力 の値, はDMU の出力 の値とする.


 ただし, である.


最小コスト は, 以下のモデルを解いたときの目的関数値として, 計算される. このとき, は最小コストを実現する入力 の値(最適入力値)である.



 技術効率性尺度 に対するコスト効率性尺度 の比は配分効率性 (allocative efficiency) を測る尺度 となる.



配分効率性は, 入力コストが与えられたときに技術的要素が最適に配分されているかという効率性を測る尺度と考えることができる. コスト効率性の拡張として, 売上効率性 (revenue efficiency)や利益効率性(profit efficiency)を評価するモデルも考えられる.

 DEAの効率性評価法の最大の特徴は, 評価対象のDMUにとって最も都合の良いように評価することである. それに対して, インバーテドDEA (inverted DEA)は非効率性の度合いによる評価法であり, クロス効率値 (cross efficiency) [2] は他のDMUの視点から見た評価法であるという点で, 通常のDEAの評価法とは異なる.

 インバーテドDEAは以下のモデルを解くことによって, 非効率性の度合いを評価する. ここで, 入力乗数を , 出力乗数を とする.



をIDEA非効率値と呼び, であればIDEA効率的, であればIDEA非効率的と呼ぶ.

 一方, クロス効率値は, 評価対象のDMUの効率値を求めるときに得られる最適な乗数を用いて計算される評価対象以外のDMUの効率値のことである. 評価対象のDMUを とすると, DMU のクロス効率値



で計算される. ここで, , は DMU を評価対象としてモデルを解いたときに得られる最適乗数である.

 CCRモデルやBCCモデルなどとは異なる生産可能集合による評価法もある. 自由処分性 (free disposal)は, DMU 同士の支配・被支配関係をもとに効率性を評価する考え方である. 以下の定式化により, その効率値 を計算することができる.



 一時点における事業体の効率性評価だけでなく, 時系列的な効率性の変化をみるための分析法として, ウィンドー分析 (window analysis)やマルムクイストの指標 (Malmquist index)を用いた分析法がある.

 さらに, DEAでは評価するときに用いる入出力値は, 一般的に定数であると仮定しているのに対し, それらがファジィ数であると考えるファジィDEA (fuzzy DEA)や確率変数であると考える確率的DEA法 (stochastic DEA method)もある.



参考文献

[1] 刀根薫, "A Slacks-Based Measure of Efficiency in DEA," 『日本オペレーションズ・リサーチ学会1998年春季研究発表会アブストラクト集』, 10-11, 1998.

[2] 刀根薫, 『経営効率性の測定と改善 -包絡分析法DEAによる-』, 日科技連, 1993.

[3] A. Charnes, W. W. Cooper, A. Y. Lewin and L. M. Seiford, Data Envelopment Analysis : Theory, Methodology and Applications, Kluwer Academic Publishers, 1994. 刀根薫, 上田徹 監訳, 『経営効率評価ハンドブック』, 朝倉書店, 2000.

[4] 山田善靖, 松井知己, 杉山学, "DEAモデルに基づく新たな経営効率性分析法の提案," Journal of the Operations Research Society of Japan, 37 (1994), 158-167.

[5] W. W. Cooper, L. M. Seiford and K. Tone, Data Envelopment Analysis, A Comprehensive Text with Models, Applications, References and DEA-Solver Software, Kluwer Academic Publishers, 1999.