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2007年8月7日 (火) 17:07時点における最新版
【ぐるーぷーえーえいちぴー (group AHP) 】
AHPはSaaty [1, 2] が提案した意思決定法の一つである. AHPは一人の人が意思決定をする場合にも複数の人が集団で意思決定する場合にも使うことの出来る意思決定法であり, 意思決定階層別に評価項目間の一対比較評価を一つに決めることが出来るという前提のもとで, その評価行列を用いて代替案を評価し意思決定をする方法である. 一人の人が意思決定をする場合にこの評価を一つに決められるという前提は自然であるが, 集団で意思決定をする場合に各評価は集団のメンバーによって異なるのが一般的である. よって, AHPを集団の意思決定に用いる場合には, メンバーごとに異なる評価を集団で一つの評価にうまくまとめることが重要である. グループAHPとは, 集団で意思決定をする場合に, 集団の各メンバーの評価を一つにまとめて集団の評価を作り出す種々の方法を織り込んだAHPである.
集団の意思決定にAHPを適用するには, 対象とする意思決定をどのような階層構造で表現するかについて集団のメンバーが合意していなければならない. 従来のグループAHPでこの点についての合意形成に特徴のある方法はまだあまり見られない. しかし, 集団で合意し易い階層構造をつくるのにISM(Interpretive Structural Modeling)を用いて少しでも客観的な階層構造を構成する方法も試み始められてはいる.
ついで集団として受け入れることの出来る一つの一対比較行列を決定しなければならない. 集団の一対比較行列の決め方は二つに大別される. 一つは集団で討議して各一対比較値を一つ一つ決めていく方法である. この方法は各一対比較値を決めるのに集団の合意を得なければならないため時間が多くかかる上に, 決めなければならない一対比較値はこの行列の要素の数だけあるために非常に多いので, 一対比較行列を一つ決定するだけでも膨大な時間がかかるという問題がある. さらに, この方法は集団の討議によって決めるために, 従来からある集団討議による決定の種々の問題点を内包している. 例えば, 集団討議による決定には集団愚考(groupthink)が生じていることもよく観察されるところである [3, 4]. 二つ目の方法は, 集団を構成するメンバーが各人で評価項目間の一対比較評価を行い, メンバーごとの一対比較行列を作成し, その結果を集めて集団の一対比較行列に種々の方法で集約する方法である. その集約の仕方で代表的なものは幾何平均を求める方法である. これはメンバーのある評価項目間の一対比較評価値の幾何平均をその評価項目間の集団の一対比較値とする方法である. この方法はSaatyによって最初に提案されて以来最も多く用いられている集約方法である. この方法がグループAHPではこれほど多く用いられるのは, 計算の容易なことと, 一対比較行列の持ってい性質である逆対称性が保持出来る方法であるためであると言われている [5]. その他, 集団メンバーの合意形成を主な目的とした集約方法なども開発されている [6]. 以上の二つの方法を混合した方法も考えられている. 例えば, 最初にメンバー一人一人が一対比較行列を作成し, その結果を上記の方法で集約して集団の一対比較行列を求めて, その結果を参考に討議して最終的にその集団の一対比較行列を決定する方法などである. 集団の一対比較行列が決定された後の意思決定結果の導出方法は従来のAHPと同様である.
参考文献
[1] T. L. Saaty, "A Scaling Method for Priorities in Hierarchical Structures," Journal of Mathematical Psychology, 15 (1977), 234-281.
[2] T. L. Saaty, The Analytic Hierarchy Process, McGraw-Hill, 1980.
[3] 山田善靖, 「情報技術を用いる集団意思決定の支援」, 『オペレーションズ・リサーチ』, 36 (1991), 531-537.
[4] H. J. Brightman, Group Problem Solving-An Improved Managerial Approach, Georgia State University, 1988.
[5] T. L. Saaty, "Group Decision Making and The AHP," The Analytic Hierarchy Process, Springer-Verlag, 1989, 59-67.
[6] 杉山学, 山田善靖, 八巻直一, 「合意形成モデルを用いたグループAHP」, Journal of the Operations Research Society of Japan, 40 (1997), 236-244.