「《マーケティング概説》」の版間の差分
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− | + | <caption>表1:市場細分化のための基本軸</caption> | |
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− | 人口統計軸 | + | <tr> |
− | 消費者行動軸 | + | <td align="left" width="25%">人口統計軸</td> |
− | + | <td align="left">性・年齢・世帯人数・ライフステージ・所得・職業・学歴・国籍・人種など</td> | |
− | サイコグラフィック軸 | + | </tr> |
− | 地理軸 | + | <tr> |
− | + | <td align="left">消費者行動軸</td> | |
− | + | <td align="left">製品認知状況・使用経験・購買状況・使用状況・求めるベネフィット・ロイヤルティ・商品関与度・情報感度など</td> | |
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+ | <td align="left">社会階層・ライフスタイル・パーソナリティなど</td> | ||
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+ | <td align="left">地域・都市の規模・人口密度・気候など</td> | ||
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ターゲティング戦略のプロセスは, これらの軸によって細分化されたセグメントごとの消費者行動の特徴, 需要の大きさと将来の規模の予測, 競合の参入状況, 自社の競争地位, 経営資源の配分可能性などから判断し, セグメントに優先順位を付けることである. 標的市場として有効であるためには, 少なくとも表2の4つの条件を満たしている必要がある. | ターゲティング戦略のプロセスは, これらの軸によって細分化されたセグメントごとの消費者行動の特徴, 需要の大きさと将来の規模の予測, 競合の参入状況, 自社の競争地位, 経営資源の配分可能性などから判断し, セグメントに優先順位を付けることである. 標的市場として有効であるためには, 少なくとも表2の4つの条件を満たしている必要がある. | ||
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+ | <caption>表2:標的市場として有効であるための条件</caption> | ||
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+ | <td align="left" width="20%">測定可能性</td> | ||
+ | <td align="left">セグメントの市場規模や購買力が測定できること</td> | ||
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+ | <td align="left">標的市場として充分な大きさを持ち, 投資に値すること</td> | ||
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+ | <td align="left">セグメントに合った効果的なポジショニング戦略を描けること</td> | ||
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− | + | <caption>表3:マーケティング・ミックスの4P</caption> | |
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− | 製品政策 | + | <tr> |
− | + | <td align="left" width="15%">製品政策</td> | |
− | 価格政策 | + | <td align="left">品質・特徴・オプション・スタイル・ブランド名・パッケージ・サイズ・サービス・保証・返品など</td> |
− | 流通政策 | + | </tr> |
− | プロモーション政策 | + | <tr> |
− | + | <td align="left">価格政策</td> | |
− | + | <td align="left">標準価格・ディスカウント・アロウワンス・支払期限・信用取引条件など</td> | |
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+ | <td align="left">流通政策</td> | ||
+ | <td align="left">流通チャネル・流通カバレッジ・立地・在庫・配送</td> | ||
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+ | <td align="left">プロモーション政策</td> | ||
+ | <td align="left">広告・人的販売・販売促進・パブリシティ</td> | ||
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− | + | <caption>表4:マーケティング活動の管理のタイプ</caption> | |
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− | + | <td>目的</td> | |
− | + | <td>アプローチ例</td> | |
− | 利益率の管理 | + | </tr> |
− | 各利益率の評価と分析: | + | <tr> |
− | + | <td align="left">価格政策</td> | |
− | 効率性の管理 | + | <td align="left" >計画された結果が達成されたかどうかを確認する </td> |
− | 各分野における効率性の分析:広告効果・プロモーション効果・営業部隊単位・流通単位の効率性 | + | <td align="left">売上額・販売個数・平均販売金額・マーケットシェア分析・売上当たりコスト・財務分析・顧客満足度分析・ロイヤルティ分析・ブランドエクイティ分析</td> |
− | 戦略的管理 | + | </tr> |
− | + | <tr> | |
− | + | <td align="left">利益率の管理</td> | |
− | + | <td align="left" >販売結果が実際の利益にどのように結びついているのかを確認する </td> | |
− | + | <td align="left">各利益率の評価と分析:製品単位・ブランド単位・販売エリア単位・顧客単位・セグメント単位・顧客満足度単位・流通チャネル単位・オーダーの大きさ単位</td> | |
+ | </tr> | ||
+ | <tr> | ||
+ | <td align="left">効率性の管理</td> | ||
+ | <td align="left" >マーケティング費用の効率性・戦略のインパクトを評価し改善する</td> | ||
+ | <td align="left">各分野における効率性の分析:広告効果・プロモーション効果・営業部隊単位・流通単位の効率性</td> | ||
+ | </tr> | ||
+ | <tr> | ||
+ | <td align="left">戦略的管理</td> | ||
+ | <td align="left" >市場・製品・流通チャネルに関してもっとも有利な方向性で戦略構築をしているかの確認</td> | ||
+ | <td align="left">ビジネス環境の監査・市場機会分析・機会と戦略のマッチング分析・戦略構築の姿勢のチェック・倫理管理・社会的責任の遂行管理</td> | ||
+ | </tr> | ||
+ | </table></center> | ||
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[4] 後藤秀夫, 星野朝子, 『市場調査ベーシック』, みき書房, 1998. | [4] 後藤秀夫, 星野朝子, 『市場調査ベーシック』, みき書房, 1998. | ||
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+ | [[category:マーケティング|まーけてぃんぐがいせつ]] |
2007年8月7日 (火) 16:33時点における最新版
【まーけてぃんぐがいせつ (marketing conception) 】
マーケティングとは個人や組織が, 製品及び価値の創造を行い, 市場での交換を通じて, 自らの欲求を満たすために行う様々なプロセスのことである. アメリカ・マーケティング協会(AMA, American Marketing Association)と日本マーケティング協会(JMA, Japan Marketing Association)では, 次のように定義している.
AMAの定義(1985年):マーケティングとは, 個人と組織の目標を満足させる諸交換を創造するために, アイディア・財・サービスの概念形成・価格付け・プロモーション・流通を計画・実行するプロセスである.
JMAの定義(1990年):マーケティングとは, 企業及び他の組織がグローバルな視野に立ち, 顧客との相互理解を得ながら, 公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動である.
企業におけるマーケティング活動のプロセスは, (1)市場機会を分析し, (2)標的市場を選定, その標的市場に対して(3)マーケティング・ミックス戦略を構築し, 実行する. そして, これらの(4)マーケティング活動を管理・運営する仕組み全体に及ぶ. この4つの段階のうち, 標的市場の選定までをターゲティング戦略(targeting)と呼び, 標的市場に対するマーケティング・ミックスの実行をポジショニング戦略(positioning)と呼ぶ.
ターゲティング戦略の目的は, 市場を細分化し(segmentation), マーケティング活動をもっとも効率良く達成できる標的市場を見極めることである. 市場とは, 製品の現実の購買者, 潜在的な購買者の集合であり, 製品に対する態度や購買行動が異なる様々な人々から構成されている. したがって, どの市場セグメントを標的とするのかにより, マーケティング活動の効率は大きく異なってくる. 市場細分化のための基本軸には, 表1のように人口統計軸, 消費者行動軸, サイコグラフィック軸, 地理軸の4つが挙げられる.
人口統計軸 | 性・年齢・世帯人数・ライフステージ・所得・職業・学歴・国籍・人種など |
消費者行動軸 | 製品認知状況・使用経験・購買状況・使用状況・求めるベネフィット・ロイヤルティ・商品関与度・情報感度など |
サイコグラフィック軸 | 社会階層・ライフスタイル・パーソナリティなど |
地理軸 | 地域・都市の規模・人口密度・気候など |
ターゲティング戦略のプロセスは, これらの軸によって細分化されたセグメントごとの消費者行動の特徴, 需要の大きさと将来の規模の予測, 競合の参入状況, 自社の競争地位, 経営資源の配分可能性などから判断し, セグメントに優先順位を付けることである. 標的市場として有効であるためには, 少なくとも表2の4つの条件を満たしている必要がある.
測定可能性 | セグメントの市場規模や購買力が測定できること |
到達可能性 | マーケティング活動が, セグメントに到達できること |
投資可能性 | 標的市場として充分な大きさを持ち, 投資に値すること |
実行可能性 | セグメントに合った効果的なポジショニング戦略を描けること |
標的となるセグメントの決定後は, そのセグメントにおいてどのようなポジションを占めたいのかを決めるプロセス(ポジショニング戦略)に入る. 製品ポジションとは, 競合する製品との比較において, 標的市場内の人々の意識における位置付け(ポジション)のことである. つまり, ポジショニング戦略とは, 標的市場内の人々の意識の中にどのように製品を位置付けるかを決定するプロセスのことである.
ポジショニング戦略には, 以下の7つの方法があり, これらの組み合わせにより, 実際のポジショニング戦略を決定する. (1)製品特性によるポジショニング, (2)製品が満たすべき市場のニーズや提供するベネフィットによるポジショニング, (3)使用時期や使用方法, 使用状況によるポジショニング, (4)製品の使用者によるポジショニング, (5)対競合製品との比較におけるポジショニング, (6)競合を意識させない新たな製品としてのポジショニング, (7)製品グループやサブカテゴリーとしてのポジショニング.
製品政策 | 品質・特徴・オプション・スタイル・ブランド名・パッケージ・サイズ・サービス・保証・返品など |
価格政策 | 標準価格・ディスカウント・アロウワンス・支払期限・信用取引条件など |
流通政策 | 流通チャネル・流通カバレッジ・立地・在庫・配送 |
プロモーション政策 | 広告・人的販売・販売促進・パブリシティ |
ポジショニング戦略を実現するためのマーケティング変数は, 製品政策(product), 価格政策(price), 流通政策(place), プロモーション政策(promotion)からなり, それぞれの政策を組み合わせて, ポジショニング戦略の実現をはかることから, これらの4つの政策のことを, マーケティング・ミックスと呼ぶ. この4つの政策が「P」から始まることから, マーケティングのフォー・ピー(4P)と呼ぶことも多い. 各々の政策に含まれるマーケティング変数は表3の通りである.
マーケティング・ミックスの実行後は, 最終プロセスであるマーケティング活動の管理の仕組みである. マーケティング活動の管理は, (1)年間計画の管理, (2)利益率の管理, (3)効率性の管理, (4)戦略的管理の4つのタイプに分けられる. 各タイプの具体的内容を表4に整理した.
タイプ | 目的 | アプローチ例 |
価格政策 | 計画された結果が達成されたかどうかを確認する | 売上額・販売個数・平均販売金額・マーケットシェア分析・売上当たりコスト・財務分析・顧客満足度分析・ロイヤルティ分析・ブランドエクイティ分析 |
利益率の管理 | 販売結果が実際の利益にどのように結びついているのかを確認する | 各利益率の評価と分析:製品単位・ブランド単位・販売エリア単位・顧客単位・セグメント単位・顧客満足度単位・流通チャネル単位・オーダーの大きさ単位 |
効率性の管理 | マーケティング費用の効率性・戦略のインパクトを評価し改善する | 各分野における効率性の分析:広告効果・プロモーション効果・営業部隊単位・流通単位の効率性 |
戦略的管理 | 市場・製品・流通チャネルに関してもっとも有利な方向性で戦略構築をしているかの確認 | ビジネス環境の監査・市場機会分析・機会と戦略のマッチング分析・戦略構築の姿勢のチェック・倫理管理・社会的責任の遂行管理 |
管理指標としては, 結果の管理指標である売上やマーケット・シェアが一般的であるが, マーケティングは価値の創造を通して, 「売り上げ」ではなく「顧客満足」を獲得する競争であると言われている昨今, 顧客との関連性を指標化した管理指標である顧客満足度, ロイヤルティ, ブランドエクイティなどが, 重要なマーケティング管理指標として欠かせなくなってきている.
参考文献
[1] P. Kotler and G. Armstrong, Principles of Marketing, 4th Edition, Prentice-Hall, 1989. 和田充夫, 青井倫一訳, 『新版マーケティング原理 -戦略的行動の基本と実践- 』, ダイヤモンド社, 1995.
[2] P. Kotler, Marketing Management - Analysis, Planning, Implementation, and Control, 4th Edition, Prentice-Hall, 1994.
[3] 嶋口充輝, 石井淳蔵, 『現代マーケティング(新版)』, 有斐閣, 1995.
[4] 後藤秀夫, 星野朝子, 『市場調査ベーシック』, みき書房, 1998.