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《産業連関分析》
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'''【さんぎょうれんかんぶんせき (input-output analysis)】''' すべての経済活動は相互依存関係にあり, 各経済主体間で財貨・サービスの生産, 投資, 消費, 輸出, 輸入の間で一連のサイクルを構成している. [[産業連関分析]]あるいは投入産出分析(input-output analysis)は, 国民経済計算勘定[2]の一つとして位置づけられ, 1つの地域(国, 複数の国あるいは, 県, 複数の県など)内のある一定期間の経済主体間の財貨・サービスの取引を表としてまとめた産業連関表あるいは投入産出表(input-output table)を利用して行うさまざまな分析を総称している. 産業連関分析は, ロシア生まれのアメリカの経済学者レオンティエフ(Wassily W. Leontief)によって1937年に発表され, 現在では発展途上国を含むほどんどの国で広く利用されている. 産業連関表の基本形は最後に示す表1のように表現される. ある年における産業部門<math>1,2, \cdots ,n\, </math>の生産額を<math>X_1,X_2, \cdots ,X_n\, </math>とする. このとき, 表の横方向に, つぎのような産出と需要のバランスが成立する. (記号の意味は表を参照) <center><math>\sum_{j=1}^{n}X_{i,j}+C_{i}+G_{i}+IP_{i}+IG_{i}+J_{i}+E_{i}-M_{i}=X_{i},\ \ \ i=1,2, \ldots ,n\, </math></center> 一方, 表の縦方向に各産業の投入とその生産額合計の間につぎの関係が成立する. <center><math>\sum_{i=1}^{n}X_{i,j}+Y_{j}+O_{j}+D_{j}+T_{j}+N_{j}=X_{j},\ \ \ j=1,2, \ldots ,n\, </math></center> ここで, <math>a_{i,j}=X_{i,j}/X_j\, </math>とおくと, この値は産業<math>j\, </math>の生産1単位に必要な<math>i\, </math>産業からの投入の原単位を意味している. これを[[投入係数]]とよぶ. また<math>{n}\times{n}\, </math>行列<math>A=(a_{i,j})\, </math>を投入係数表とよぶ. 投入係数表の各列は, その産業の原材料構成であり, 生産技術構造を表わしていると考えられる. [[最終需要]]を<math>F=C+G+IP+IG+J+E\, </math>と定義すれば, 生産と需要のバランスを行列とベクトルによる方程式で表現すると<math>( AX+F-M=X ) \, </math>となる. この式をXについて解くと<math>( X=(I-A)^{-1} (F-M) )\, </math>と求められる. なお, Iは単位行列である. 行列<math>(I-A)^{-1}\, </math>を[[レオンティエフ逆行列]]とよぶ. この行列は逆行列が存在すればつぎのように展開することができる. <center><math>(I-A)^{-1} = I+A+A^2+ \cdots \, </math></center> 第1項は直接の需要による生産に, 第2項以降は波及的間接需要による生産に対応している. この式は産業構造の相互関係を通して最終需要が波及的に連関していく様子を示している. さて, 産業連関表の生産額ベクトル<math>X\, </math>の各要素は非負でなければならないが, このための必要十分条件は <center><math>|I-A| > 0\, </math></center> で与えられる. これは[[ホーキンス・サイモン条件]]と呼ばれている. この式が成立するための十分条件として次式の[[ソロー条件]]が知られている. <center><math>\sum_{i=1}^{n}a_{i,j}<1,\ \ j=1,2, \ldots ,n\, </math></center> 左辺は投入係数の<math>j\, </math>列の和であるからこの式は自動的に成立する. それゆえ, 計算される生産額<math>X \, </math>が非負であるという条件は自然に成立している. つぎに, <math>B=(I-A)^{-1}\, </math>とおくと<math>B\, </math>の一つの列(<math>j\, </math>部門)の和はその列に対応する産業の需要に1単位の変化があった場合の, 全産業への影響を表していると考えることができる. そこで次式を<math>j \, </math>部門の[[影響力係数]]と呼んでいる. <center><math>\displaystyle \sum_{i=1}^{n}b_{i,j}/\displaystyle \sum_{i=1}^{n}\sum_{j=1}^{n}b_{i,j}\, </math></center> 一方, 行列<math>B\, </math>の1つの行(<math>i\, </math>部門)の和はすべての需要部門に1単位の変化があったときの<math>i\, </math>産業がどれだけ影響を受けるかを表しており[[感応度係数]]と呼ばれている. <center><math>\displaystyle \sum_{j=1}^{n}b_{i,j}/\displaystyle \sum_{i=1}^{n}\sum_{j=1}^{n}b_{i,j}\, </math></center> 産業連関表を利用すれば生産額や環境影響の予測など将来の問題の分析を行うことが可能になる. そのために投入係数の予測が必要になる. しかしながら投入係数のすべての要素を個別に予測することはデータの面からいって容易でない. そのためのさまざま工夫がされている. 投入係数の予測法のうち, もっと基礎となる方法は[[RAS法]]と呼ばれている手法である. この方法は, 現在の投入係数<math>A\, </math>に行単位, 列単位ごとに同じ乗数をかけることにより, 予測時点の中間需要合計, 中間投入合計に一致するように将来の投入係数を構成していく方法である. 具体的には逐次近似によって予測時点の投入係数を求めることができる.日本におけるRASの適用は宮川ら [1] によって昭和41年に行われている. RAS法をベースとしてさまざまな投入係数予測法が開発されている. 一方, 過去の経験によれば, 投入係数自体は必ずしも安定していないことが多く, この意味ではRAS法による予測には基本的限界がある. 産業連関分析はほぼ確立された理論・技術であり, 産業構造の予測,地域経済問題の分析, 公害・環境問題の分析,ライフサイクルアセスメントなどの分野で広く利用されている. 最近は県や都市の産業連関表あるいは発展途上国の産業連関表が整備される一方で, 国際的な経済の相互関係を分析する道具として活発に利用されている[4]. <center>表1:産業連関表<br> <table> <tr><td align=center>[[画像:sk-0204-c-d-07-1.png]]</td></tr> <td align=center></td> </table> </center> <!-- \begin{table}[h] \caption{産業連関表}\label{C-D-07+hyou1} \vspace{0.3cm} % \footnotesize \normalsize \def\pbox[#1]{\parbox[t]{1zw}{#1}} $\begin{array}{|c|p{2.5cm}|cccc|cccccc|c|c|} \hline \multicolumn{2}{|c|}{} & \multicolumn{4}{|c|}{中間部門} & \multicolumn{6}{c| }{最終需要} & & \\ \cline{3-12} \multicolumn{2}{|c|}{} & & \pbox[産業1] & \pbox[産業2] & \pbox[産業n] & \pbox[民間消費] & \pbox[政府消費] & \pbox[民間設備投資] & \pbox[政府設備投資] & \pbox[在庫調整] & \pbox[輸出] & \pbox[輸入] & \pbox[合計] \\ \hline 中 & 産業1 & & X_{11} & X_{12} & X_{1n} & C_{1} & G_{1} & IP_{1} & IG_{1} & J_{1} & E_{1} & M_{1} & X_{1} \\ 間 & 産業2 & & X_{21} & X_{22} & X_{2n} & C_{2} & G_{2} & IP_{2} & IG_{2} & J_{2} & E_{2} & M_{2} & X_{2} \\ 部 & ... & & . & . & . & . & . & . & . & . & . & . & . \\ 門 & 産業n & & X_{n1} & X_{n2} & X_{nn} & C_{n} & G_{n} & IP_{n} & IG_{n} & J_{n} & E_{n} & M_{n} & X_{n} \\ \hline 総 & 家計外消費支出 & & N_{1} & N_{2} & N_{n} & & & & & & & & N \\ 付 & 雇用者所得 & & Y_{1} & Y_{2} & Y_{n} & & & & & & & & Y \\ 加 & 営業余剰 & & O_{1} & O_{2} & O_{n} & & & & & & & & O \\ 価 & 資本減耗引当 & & D_{1} & D_{2} & D_{n} & & & & & & & & D \\ 値 & 間接税補助金 & & T_{1} & T_{2} & T_{n} & & & & & & & & T \\ \hline \multicolumn{2}{|c|}{合計} & & X_{1} & X_{2} & X_{n} & C & G & IP & IG & J & E & M & \\ \hline \end{array}$ \normalsize \end{table} --> ---- '''参考文献''' [1] 宮沢健一,『産業連関分析』(日経文庫), 日本経済新聞社, 1975. [2] 齋藤光男, 『国民経済計算』(創文社現代経済学選書7), 創文社, 1991. [3] 総務庁, 『昭和60年産業連関表総合解説編』, (財)全国統計協会連合会, 1992. [4] 環太平洋産業連関分析学会編, 『産業連関-イノベーション&I-Oテクニーク-』, 大蔵省印刷局. [[category:公共システム|さんぎょうれんかんぶんせき]]
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