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'''【とうしあんけんのひょうか (evaluation of capital investment proposals) 】''' 企業その他の組織体が, 長期的な観点から計画を立案する場合, 各種の設備への投資問題が検討の対象になることが多い. たとえば, 機械設備, 車両, 工場, 倉庫, 事務所, 施設, 研究・開発のための投資などである. また, 生産設備や事務所の規模を拡大すると, それにともなって, 材料, 製品, 商品などの在庫や, 運転資本も増加するので, これらも投資と考えることができる. また, 企業の財務部門では, 余裕資金を運用するために株式や社債に対する投資も行っている. 各種の投資問題における投下資金の経済性を評価するためには, 資本の利率を用いて資金の時間的な価値を換算することが重要である. 資金の調達に伴って負担される利子, または標準的な運用利率の犠牲額([[機会損失]])を一般に資本コストと呼び, その利率を資本の利率と呼ぶ, 設備投資案の評価, 借入金の返済計画, 余裕資金の運用方法などを検討する場合, 異なる時点での収入や支出を単純に足したり引いたりするのは合理的でないので, 資本の利率を用いて割増・割引計算を行い時間的価値を調整する必要がある. 資本の利率を見積もることは厳密には難しいが, 通常は各種の利子率の加重平均値にリスクを加味していくらか高めにした利率を用いることが多い. これを[[計算利率]]あるいは計算利子率という. 資本の利率を用いて時間換算を行う場合, 一般的に次の3つのタイプの価値が用いられている. (1)現時点での価値に換算した現在価値 (2)投資の効果が及ぶ最終時点での価値 (3)毎期末均等払いの値に換算した平均値 投資案件の[[投資案件の評価指標]]としては, 多種多様のものが発表されているが, 使われる指標のタイプを大別すると, 基本的には, (a)額による比較, (b)率による比較, (c)期間による比較, の3つの比較法がある. (a)の方法は, 投資案の[[資金流列]]に計算利率を適用して割増・割引計算を行い, [[資金の時間的価値]]を正しく織り込んで投資案の正味利益額を求める方法である. 現時点での価値に換算した値を[[正味現在価値]], 投資の効果が及ぶ最終時点の価値に換算した値を正味最終価値, 年平均値に換算した値を正味年金価値と呼び, これらの値を利用する判定法を, それぞれ現価法, 終価法, 年価法とよぶ. (b)の方法は, 投資案の効率をあらわす[[内部投資収益率]](利回り, 報収率とも呼ばれる)を求めて比較する方法である. 内部投資収益率は, 投資案の資金流列の正味現在価値をゼロにするような利率として求められる. (c)の方法は, 初期投資額が毎年の報収(収益から操業費用を差し引いた額)によって回収しつくされるまでの期間(これを[[回収期間]]と呼ぶ)を求めて比較する方法である. 計算利率で調整する方法と, しない方法とがある. これは利益を大きくすることを目的にする問題では正しい選択を保証するものではない. 回収期間は, 将来の不確実性や資金繰りを重視する場合の安全性の評価尺度として利用されることが多い. まず, 特定の1つの案の経済性を評価する場合には, 正味利益額を計算し, それが正の値であればその案は有利と判定される. 内部投資利益率で判定する場合には, その値が計算利率よりも大きければ有利と判定してよい. 複数の投資案を評価する場合には, 各案の相互関係に応じて評価指標を使い分けることが有用である. 各投資案が互いに干渉し合わずに, 資金などの制約条件のもとで有利な投資案を自由に組み合わせて選んでよいという場合, それらの案を[[独立案]]とよぶ. 独立案からの選択の場合は, 各投資案の内部投資収益率を計算する. それらの大きさによって, 独立案の有利さの順位付けを行って, 資金制約の範囲で案を選択していく. いくつかの案の中から1つを選ぶと, 他の案は必然的に捨てられるというタイプの問題は, [[排反案]]からの選択と呼ばれる. この場合, 最有利な投資案を求めるためには, それぞれの案の正味利益額を計算して, それの最大の案を選べばよい. もし, 各投資案の寿命が異なっている場合には, 類似反復取り替えの仮定をおき, 各投資案の正味年金価値を計算して評価すればよい. また, 排反案の場合は, 各投資案の内部投資収益率はそのままでは評価指標にはならないが, 経済的に無資格な案を排除した上で, 追加効率という考え方を適用すれば, 最有利な案を選択することができる. この方法によると, 計算利率の変化などに応じて最有利な案の変化を知ることができる. 互いに独立な問題領域がいくつかあって, 各問題領域にそれぞれ複数の排反的な投資案が含まれているというタイプの場合は混合案の選択問題と呼ばれる. 資本予算の配分問題などはこのタイプの問題である. この場合には, まず各独立領域の中の排反案について, 追加効率を計算して無資格案を整理し, その上で総合的な判断を行う. 設備投資案の評価を行う場合, 将来の見通しが不確実であると, 分析が困難になる. したがって, 不確実な要因に対する予測の精度を高めることが重要であるが, やはり限界がある. 一般に, 設備投資計画は同種の事象が繰り返し反復して生じるということがなく, 確率理論を応用して期待値計算をするという方法は実践的ではない. そこで, より簡便な方法で不確実性に対処する工夫がなされている. その一つは, 不確実な数値を動かしてみて, 利益に対する感度を調べる方法がある. 特に, 予測が悪い方にはずれた場合, 利益がマイナスになったりする危険はないか, という一種の安全性を調べておくことが有用である. ---- '''参考文献''' [1] 千住鎮雄, 伏見多美雄, 藤田精一, 山口俊和, 『経済性分析』, 日本規格協会, 1979. [2] 千住鎮雄, 伏見多美雄, 『経済性工学の基礎』, 日本能率協会マネジメントセンター, 1982. [[category:経営・経済性工学|とうしあんけんのひょうか]]
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