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'''【しんらいせい (reliability) 】''' 部品, 機械の故障は日常茶飯事のことであり, 不可避なことである. 機械, システムなどの動作・故障特性について扱う分野が信頼性理論 [1, 2, 3] である. 本項においては[[信頼性]] (reliability)について一般的に述べる. より詳しい項目は以下で解説する. 信頼性用語は日本工業規格 (JIS) により定められているので, その一部を抜粋する. 定義1 アイテム(item)とは「信頼性の対象となるシステム (系) , サブシステム, 機器, 装置, 構成品, 部品, 素子, 要素などの総称またはいずれか」である. システムとは「所定の任務を達成するために選定され, 配列され, 互いに連係して動作する一連のアイテム (ハードウェア, ソフトウェア, 人間要素) の組合せ」である. これらの用語は上位アイテム (システム) から下位アイテム (要素) まで階層的な意味で適宜使用される. システム (アイテム) が果たすべき仕事が任務であり, アイテム間の機能的・物理的な相互関連がインターフェースである. アイテムの周囲条件が環境である. そのとき[[信頼度]] (reliability) は次のように定義される. 定義2 信頼度とは「アイテムが与えられた条件で規定の期間中, 要求された機能を果たす確率」である. アイテムが規定の機能を失うことは故障であり, 故障状態の形式による分類は故障モードであり, 例えば, 断線, 短絡, 折損, 摩耗, 特性の劣化などがある. 定義3 初期故障とは「使用開始後の比較的早い時期に, 設計・製造上の欠点, 使用環境との不適合などによって起こる故障」である. 偶発故障とは「初期故障期間を過ぎ摩耗故障期間に至る以前の時期に, 偶発的に起こる故障」である. 摩耗故障とは「疲労・摩耗・老化現象などによって時間とともに故障率が大きくなる故障」である. 以下では, 確率変数 <math>X\, </math> は連続形であると仮定する. 非負の <math>X\, </math> はあるアイテムの故障が起こるまでの寿命時間 (lifetime) を表す確率変数とする. [[寿命分布]] (lifetime distribution) を <center> <math> F(t) = \mathrm{Pr}\{ X \le t \} \ \ \ \ \ (t \ge 0) \, </math> </center> としよう. <math>F(t)\, </math> は時刻 <math>t\, </math> までに故障する確率を表す. 確率変数 <math>X\, </math> の残存確率 <center> <math> R(t) = 1 - F(t) = \mathrm{Pr}\{ X > t \} \ \ \ \ \ (t \ge 0) \, </math> </center> は信頼度関数とよばれる. <math>R(t)\, </math> はアイテムが時刻 <math>t\, </math> で機能している確率を表す. 確率変数 <math>X\, </math> の密度は存在すると仮定し, <center> <math> f(t) = \frac{{\rm d} F(t)}{{\rm d}t} \ \ \ \ \ ( t \ge 0) \, </math> </center> と表す. [[故障率]] (failure rate) あるいはハザード率 (hazard rate) は <math>R(t) > 0\, </math> と仮定して <center> <math> r(t) = \frac{f(t)}{R(t)} \ \ \ \ \ (t \ge 0) \, </math> </center> と定義される. ここで, <center> <math> r(t) {\rm d}t = \Pr\{ t < X \le t + {\rm d}t | X > t\} = \frac{F(t+{\rm d}t) - F(t)}{R(t)} \, </math> </center> であることに注意すれば, <math>r(t) {\rm d}t\, </math> はアイテムが時刻 <math>t\, </math> で故障していないという条件の下で, 時間区間 <math>(t, t+{\rm d}t]\, </math> で故障する条件付き確率を表す. <math>F(0) = 0\, </math> (すなわち <math>R(0) = 1\, </math>) と仮定すると <center> <math> r(t) = \frac{-\frac{{\rm d}R(t)}{{\rm d}t}}{R(t)} \, </math> </center> となるから, 初期条件 <math>R(0)=1\, </math> の下でこの微分方程式を解いて <center> <math> R(t) = \exp \left[ - \int_0^t r(x) {\rm d}x \right] \, </math> </center> となる. この <math>R(t)\, </math> を用いて, 分布および密度関数は <center> <math> F(t) = 1 - \exp \left[ - \int_0^t r(x) {\rm d}x \right] \, </math> </center> <center> <math> f(t) = r(t) \exp \left[ - \int_0^t r(x) {\rm d}x \right] \, </math> </center> と書くことができる. したがって, 分布, 密度関数および信頼度はいずれも故障率 <math>r(t)\, </math> を用いて書き直すことができる. 特に, <math>\textstyle \int_0^t r(x) {\rm d}x\, </math> は累積ハザード関数あるいはハザード関数とよばれる. 一般に, アイテムは時間経過とともに劣化する. この劣化する概念は[[エージング]] (aging) とよばれる. エージングは故障率の増減によって定義される. 定義4 故障率<math>r(t)\, </math>が非減少 (増加あるいは一定) 関数ならば, 寿命時間分布は, <math>\rm{IFR} \, </math> (increasing failure rate), 一定関数ならば, <math>\rm{CFR}\, </math> (constant failure rate), 非増加 (減少あるいは一定) 関数ならば, <math>\rm{DFR}\, </math> (decreasing failure rate)とよばれる. 一般に, [[確率順序]] (stochastic order) は次のように定義される. 定義5 <math>X\, </math> および <math>Y\, </math> は2つの確率変数とする. あらゆる <math>-\infty < t < \infty\, </math> に対し <center> <math> \Pr\{ X > t \} \le \Pr\{ Y > t \} \, </math> </center> ならば, <math>X\, </math> は <math>Y\, </math> より"確率的に小さい" (<math>X \le_{\rm st} Y\, </math> で表す) という. あるいは, <math>X \le_{\rm st} Y\, </math> はあらゆる <math>-\infty < t < \infty\, </math> に対し, <center> <math> \Pr \{ X \le t \} \ge \Pr\{ Y \le t \} \, </math> </center> と同等である. さて, <math>t \ge 0\, </math> に対して <math>[T - t | T > t]\, </math> は <math>T > t\, </math> の条件の下での条件付き確率変数とする. <math>T\, </math> が IFR であることは, あらゆる <math>t \le t'\, </math> に対し, <center> <math> [T - t | T > t] \ge_{\rm st} [T - t' | T > t'] \, </math> </center> と同等である. DFR についても不等号を反対にすればよい. このようにして, エージングのより一般的な概念を確率順序によって定義できる. 詳しくは Shaked and Shanthikumar [4] 参照. ---- '''参考文献''' [1] R. E. Barlow and F. Proschan, ''Mathematical Theory of Reliability'', SIAM, Philadelphia, PA, 1996. [2] R. E. Barlow and F. Proschan, ''Statistical Theory of Reliability and Life Testing'', To Begin With, c/o Gordon Pledger, 1142 Hornell Drive, Silver Spring, MD 20904, 1981. [3] R. E. Barlow, ''Engineering Reliability'', SIAM, Philadelphia, PA, 1998. [4] M. Shaked and J. G. Shanthikumar, ''Reliability and Maintainability'', in Stochastic Models, D. P. Heyman and M. J. Sobel, eds., North-Holland, 1990. (邦訳, 伊理・今野・刀根監訳, 「確率モデルハンドブック」, 朝倉書店). [[category:信頼性・保全性|しんらいせい]]
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