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'''【せいひんきかくかいはつ (planning and development of new products)】''' (1) 総説 [[製品企画開発]]の主対象は新製品であるが類似製品も含まれる. また, その規模の大きさによって大型プロジェクト(国家プロジェクト等)から日常品の開発プロジェクト(電気機器製品等)まで含まれる. これらの広範囲にわたる製品企画開発は, 考え方はほぼ同じであるが, その進め方にはかなり大きな差異がある. 従来より[[プロジェクト管理]]の領域では, 化学プラントなどのプロジェクトを対象とした研究がなされてきた. これは, プロジェクトに投入する人的・物的資源を最も有効に活用して初期の目標を達成させるための研究であり, その主要なテーマは, プロジェクトの計画とコントロール, プロジェクトの組織づくりと組織運用, プロジェクト管理の技法等である. 他方, われわれの身近な製品, たとえば自動車や機械, 電気機器などの企画開発については, 開発管理や設計管理の領域, また近年では[[原価企画]]の領域で研究されている. ここではこれらの製品を対象とした製品企画開発について述べることにする. (2)製品コンセプト・エンジニアリング 自動車や機械, 電気機器等の企画開発は, 受注生産品ならば発注者の設計要求事項を徹底的に聴き出して体系的に整理しなければならないし, 見込生産品ならば顧客のニーズやウォンツを把握することから始めなければならない. 後者の場合は, 市場調査を行い, これに基づくニーズ分析を行うことがこれにあたる. この調査により, 企画開発する新製品のターゲット(販売対象者)とベネフィット(製品の機能・品質)を明確にし, これを基に製品コンセプト(製品の個性づけや特徴づけ)案をつくり上げるのである. このように, 顧客指向の下に製品企画開発を進めなければならない. 従来は, ややもすればメーカー指向のものが多くあり, 製品そのものはよいが顧客の心をとらえられないものが少くなかった. この反省から今日では, 顧客に満足して購入・使用してもらうための研究が進み, [[顧客満足|顧客満足度]]を定量的に測定するようになった. このような製品コンセプトをつくる一連のプロセスをコンセプト・メーキング(concept making)という. コンセプト・メーキングを効果的に行うためにいくつかのツールが開発されており, これを活用することが多い. その代表的なものとして[[品質機能展開]](quality function deployment:QFD)やコンジョイント分析(conjoint analysis),ゼロルックVE(0 Look VE)などがあるが, とりわけ品質機能展開は多用されている. 新製品のコンセプト案は上述のようにして作成できても, それを製品にしたとき, 当該企業に利益をもたらすか否かは不明である. そこで, この案で目標利益が確保できるかどうかの採算性分析を十分に行う必要がある. このうち最も重要なものは売価設定である. 見込生産品の場合は, 標準的売価(たとえばメーカー希望価格, リストプライス)の合理的な設定である(受注生産品の場合もこれに準ずればよい). 競合製品が多くある場合, その標準的売価は, 基本的にはその製品群の主要な機能のレベルによる予測売価(主要な機能のレベルを説明変数として競合製品の標準的売価を被説明変数とする売価予測式によって算出したもの)に, 戦略的要素を加味して決定されるといえる. このような売価設定に関する分析が[[機能価格分析]]である. 標準的売価に基づき販売量を予測し, 当該製品のライフサイクルにわたる売上高を算出する. 他方, この販売量を基に原価見積を行い, これらを比較検討し, 当該製品のライフサイクルにわたる期別採算性分析を行う. この結果, 採算上有利であると判断されれば具体的な開発設計活動に入るのである. (3)開発諸目標の設定とその達成管理 製品コンセプト案は, 採算性分析の結果, よしと判断されれば製品コンセプトとして決定される. ここまでの一連の活動, すなわち, コンセプト・メーキングと採算性分析の結果, 採用できる製品コンセプトをつくり上げる全プロセスが製品コンセプト・エンジニアリングである. 製品コンセプトが決定すると開発設計チーム編成を行い, それぞれの分担を決めるなどチームづくりを行う. これと併行して開発設計の諸目標を決定する. その主なものは, 主要な機能・性能・信頼性等の技術目標, 開発日程目標, 原価目標である. 技術目標は製品コンセプトを具現化するためのものであり, 類似競合製品との差別化に重要なものである. それだけに, 新技術の採用や新付加機能の追加, さらにはランニングコスト削減案などが採り込まれる. しかし, ここで注意すべきことは, これらを新しく採り込むに当っては十分なテストと証明をすることである. 中途半端な状態や希望的観測の下にこれらを採用してはならない. 技術上の[[開発リスク]]を避けるためにも留意すべきことである. 技術目標と同等に重要なことは, 原価目標を達成させることである. 原価目標は挑戦的・野心的レベルの目標であるから, 決して容易なものではない. しかし, この目標が達成できなければ当初の目標利益は達成できない. そこでこの原価目標を達成させるために, 製品を構成している機能分野や構造ブロックに細分化し, それぞれがこの目標を達成しているか否かを原価見積によって評価する方法がとられる. この評価によって原価目標が達成されていなければ原価低減を図らねばならない. 原価低減は, 固有技術的アプローチによるものもあるが, 時間的な制約があるので, 多くの場合管理工学的アプローチ, とりわけ[[価値工学]](value engineering:VE)が採用される. VEは元来, 原価低減のための技法ではなく, 機能と原価を比較検討してより価値の高い製品やサービスをつくり出すための技法である. しかしながら, この技法を原価低減による価値向上の技法としてとらえることが多く, 開発設計の各段階で広く活用されている. また, 開発設計は開発日程目標の範囲内で行われなければならない. すなわち, タイミングが重要であり, これを失すると新製品の価値を失うことになる. そのため, 日程管理のためにPRET手法やバーチャートなどによって常にその進捗を管理しなければならない. したがって, 開発設計のチームリーダーはチーム・メンバーの士気高揚を図りながら, これらの諸目標を同時に達成させなければならない. このような努力をしてもこれらの目標が達成できそうにないこともある. この場合は速やかに対策を講じなければならない. たとえば, 開発設計者の追加, トレードオフ(性能-原価の間の調整・妥協, 日程-性能の間の調整・妥協, 原価-日程の間の調整・妥協など)の実施や大規模なVE検討などである. いずれにしてもこれらの目標は, すべてが必達目標であり, 目標が達成されて始めて開発設計が完了するのである.
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