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'''【じゃすといんたいむせいさんしすてむ (JIT(just in time) production system) 】''' [[JIT ]](JIT2) (just in time) 生産システムは, 徹底的なムダの排除によるコスト低減をめざした生産システムであり, その基本理念は[[平準化 (JIT生産システムにおける)|平準化]]を基礎とするJITと[[自働化 (生産システムにおける)|自働化]]である. JITとは, 「必要な物を, 必要な時に, 必要なだけ生産する」理念であり, この理念のもとで, [[大野耐一]] [1] は, 「[[後工程引き取り後補充生産方式]]」([[プル方式]]とも呼ばれる)を創造し, 工程内, 工程間で必要な情報を必要なときに伝える手段としてかんばんを創案した. すなわち, いつ, 何を, どれだけ必要かが最も早く, 正確にわかる後工程が, 使った分だけを前工程に引き取りに行き, 前工程は引き取られた分だけを生産し, 補充するという生産方式である. この時, 後工程が自工程の都合だけで一度にまとめて引き取れば, 前工程はそのための在庫を持つか, あるいは生産能力を増やして対応しなければならず, 負担を強いられることになる. したがって, 後工程は前工程から引き取る部品の種類, 量が平均化するように生産しなければならない. これを生産の平準化と呼んでいる. 自働化とは, 機械に人間の知恵を付与することであり, 良品のみを生産する理念である. すなわち, 異常を自動的に検知して停止する自動機械, さらには不具合が発生すれば作業者がラインを停止させ, 再発防止のための[[改善]]を行う生産ラインを生み出している. かんばんは, 需要変動, 部品在庫, 設備故障, 出勤状況等々の様々な不確実性のもとで, JIT生産を実現するために考案された「後工程引き取り, 後補充生産方式」における情報伝達・制御手段である. 部品あるいは製品の収容箱には1枚のかんばんが付けられ, 工程内あるいは工程間を循環し, 各工程における生産量や前工程からの部品の引き取り量を制御する. かんばんには大別して, 生産指示かんばんと引き取りかんばんの2種類がある [2]. 各工程で生産された部品は収容箱に入れられ, 生産指示かんばんを付けられて所定の場所におかれる. 後工程がこの部品を引き取りに来たとき, 生産指示かんばんをはずして, かんばん受け取りポストに順に入れ, 代わりに持ってきた引き取りかんばんをかけて収容箱を持ち帰る. はずされた生産指示かんばんは適宜集められ, はずれた順に生産指示ポストにおかれる. 各工程はそのかんばんの順に, 対応する部品を収容箱の容量だけ生産する. このとき, かんばんはその最初の部品とともに工程を流れる. 一方, 後工程が前工程からの部品を用いて生産を始める際, 収容箱の最初の1個を使用するときに, かけられている引き取りかんばんをはずし, 引き取りかんばんポストに入れる. 後工程は, あらかじめ定められた時間毎に, あるいは定められた枚数がたまる毎に, 空の収容箱と一緒にかんばんを持って前工程へ部品を引き取りに行く. 前者を「定期引き取り方式」, 後者を「定量引き取り方式」と呼んでいる. かんばんを運用するルールは, :1. 後工程は, 前工程へはずれた引き取りかんばん分だけを引き取りに行く. :2. 前工程は, 生産指示ポスト内のかんばん分だけ, その順番に生産する. :3. 良品だけを生産し, 後工程へ不良品を送らない. :4. かんばんは必ず現物に付けておき, 実数と収容数が合わなければならない. :5. かんばんのない時は運ばない, 作らない. :6. かんばんの枚数を減らしていく(問題を顕在化させ, 改善にむすびつける). である. したがって, 各工程のかんばん枚数が設定され, 最終工程から顧客により製品が引き取られるか, 最終工程へ生産指示が出されれば, 全ての工程はこれに同期し, 上記ルールに従い自律分散的に生産を継続する. 特に6番目のルールは, ボトルネック工程を見つけ出し, 絶え間ない改善のサイクルを回す「仕組み」を与えるものである. そして, 改善活動の第1歩が[[5S (生産システムにおける)|5S]]であり, 整理, 整頓, 清掃, 清潔, 躾を意味している. ここで, 整理とは「必要なものと不要なものを区別し, 不要なものを直ちに処分すること」であり, 整頓とは「必要なものが必要なときにすぐ使えるように置き場を決め, 表示すること」である. 清掃とは「各自が分担し, 責任を持って汚れ, 埃等をきれいにし, 生産設備や人の能力が十分に発揮できる職場作りをすること」であり, 清潔とは「整理, 整頓, 清掃の状態を維持すること」, 躾とは「決められたことを正しく守る習慣づけを行うこと」である. [[多能工]]とは, 文字通り複数工程の作業を受け持つ能力を持つ作業者のことであり, 作業者全員が各係や組の全工程を受け持つことができるように教育・訓練する仕組みを多能工化と呼んでいる. そして, 第1工程から加工工程順に機械を配置し, 第1工程と最終工程を隣接させてU字状に配置した生産ラインを[[U字型生産ライン]]と呼ぶ. 原材料の入口である第1工程と製品の出口である最終工程を同じ多能工が受け持つことで, 生産ライン内の部品在庫量を常に一定に保つことができ, また全工程を1人の多能工が受け持つことで, 1個流しを実現できる. さらに, 多能工数を調整することで, 需要変動に柔軟に対応することができ, 現今の需要の多様化と製品寿命の短命化に適合できる数少ない生産ラインである. JIT生産システムは, 1973年のオイルショック時にトヨタ生産方式として脚光を浴びて登場して以来, この4半世紀の間にJIT production systemあるいはkanban systemとして全世界に定着してきた [3] - [6]. 特に1980年代以後, 製造業の復権をめざした米国を中心に精力的に理論的研究が行われてきた(たとえば [7]). MITが提唱したリーン生産システム [8, 9] もその成果の1つである. 近年, 我が国においてもJIT生産システムに関連した研究が活発に行われており, [10, 11] では今後の展開が, [12]-[15] では労務管理を含めた包括的なトヨタ主義(トヨティズム)が論じられている. オペレーションズ・リサーチ誌においても [16, 17] があり, 待ち行列理論を駆使した理論研究は基礎編「待ち行列の生産システムへの応用」に紹介されている. '''参考文献''' [1] 大野耐一,『トヨタ生産方式-脱規模の経営をめざして』, ダイヤモンド社, 1978. [2] 門田安弘,『新トヨタシステム』, 講談社, 1991. [3] 安保哲夫他, 『アメリカに生きる日本的生産システム』, 東洋経済新報社, 1991. [4] 小川栄次編, 『トヨタ生産方式の研究』, 日本経済新聞社, 1994. [5] フランス計画庁編, 『フォード主義対トヨタ主義』, 創風社, 1994. [6] 風間信隆, 『ドイツ的生産モデルとフレキシビリティ』, 中央経済社, 1997. [7] H. Groenevelt, "The Just-In-Time System,"in ''Logistics of Production and Inventory,'' S. C. Graves, A. H. G. Rinnoy Kan and P. H. Zipkin, eds. North-Holland, 629-670, 1993. [8] ジェームズ・P・ウオマック他, 『リーン生産方式が, 世界の自動車産業をこう変える』, 経済界, 1990. [9] ジェームズ・ウオーマック他, 『ムダなし企業への挑戦』, 日経BP社, 1997. [10] 佐武弘章, 『「消費完結型」生産方式』, 白桃書房, 1995. [11] 玉木欽也, 『戦略的生産システム』, 白桃書房, 1996. [12] 野村正實, 『トヨティズム』, ミネルヴァ書房, 1993. [13] 鈴木良始, 『日本的生産システムと企業社会』, 北海道大学図書刊行会, 1994. [14] 丸山惠也, 『日本的生産システムとフレキシビリティ』, 日本評論社, 1995. [15] 石田光男他, 『日本のリーン生産方式』, 中央経済社, 1997. [16] 小谷重徳編, 「特集 企業事例-トヨタの生産システム」, 『オペレーションズ・リサーチ』, '''42'''(1997), 69-91. [17] 大野勝久,「JIT生産システム」,『オペレーションズ・リサーチ』, '''43'''(1998), 272-278.
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